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試写室・劇場から

セラフィーヌの庭

12月4日(土)から京都シネマで公開

©TS Productions/France 3 Cinéma/Climax Films/RTBF 2008

独創的な女性画家の半生を、
圧倒的な神がかりの演技で

この映画のヒロインは、1864年に生まれ、1942年に精神科病院で亡くなった実在のフランス人画家セラフィーヌ・ルイ。彼女は天使の啓示を受けて41歳で絵を描き始め、家政婦や修道院の下働きをしながら、画筆を握っていた。だが、貧しく知性もない女として周囲からは低く見られ、その絵が世間に知られることはなかった、運命の男に会うまでは。

ピカソの才をもいち早く認めたドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデの支援によるセラフィーヌの変化、戦争の影、画家と画商という二人の微妙な関係性などが、絵画的な美しい映像で語られていく。草木や花に話しかけ、神と対話するセラフィーヌの純朴さは、やがて一線を越え、痛ましい事件を招いてしまう。静かなラストシーンでは、もはや天使と一体化したヒロインを見るようだ。

演技というより、セラフィーヌその人になっちゃったヨランド・モローが実にすばらしい! メタボ体形なのだが、目が飛んでいる。私たちが見ている世界とは異なる世界を見つめている目だ。『素朴派』というカテゴリーに属する彼女の花をモチーフにした作品群にも注目を。ゴッホやピカソに通ずる、胸を騒がせる異端の香りだ。ウーデ役に、ウルリッヒ・トゥクール。監督は、マルタン・プロヴォスト。

(ライター 宮田彩未 

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