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試写室・劇場から

デザートフラワー

3月19日(土)から京都シネマで公開

©Desert Flower Filmproductions GmbH

サクセスストーリーの陰で
彼女が抱えてきた傷の痛み

世界的なスーパーモデルとして活躍したワリス・ディリーの自伝を映画化したもの。これは、さまざまな面から、見る者に問題を投げかけてくる。一つは、女性の自立について、二つ目は不法移民の問題、そして、主にアフリカでいまだに女性に対して行われている悪しき風習FGM(女性性器切除)について。

ワリスは、ソマリアの遊牧民一家に生まれるが、13歳の時に、父親がお金と引き換えに彼女を老人に嫁がせようとしたため、故郷から抜け出してロンドンへ。メイドの仕事をしたり、路上生活を送ったりしていたが、著名カメラマンにスカウトされ、モデルとしての新しい活路を見いだす。

公の場で衝撃的な過去を語るワリスの姿には、胸がかきむしられる。有名になってからはFGM廃絶運動に力を注いだというワリスを演じたのは、現役トップモデルのリヤ・ケベデ。表情豊かなチャーミングな瞳に吸い込まれそうになる。

ワリスが少しずつ水を出しては止め、また水を出しては止めながらシャワーを使うシーンが妙に印象深い。砂漠地帯に育った彼女にとって水は非常に貴重なもの。このような細部を含め、シェリー・ホーマン監督は女性ならではの目線で、たくましさと繊細さを併せ持つワリスの半生を、鮮やかに的確にとらえた。

(ライター 宮田彩未 

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