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インタビュー

退蔵院の襖絵を描く絵師 村林由貴さん

1986年生まれ、兵庫県出身。
京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業、同大学大学院芸術研究科修了。
今後は、全国の寺巡りをして、襖絵の勉強もする予定だとか

「心を豊かにして、考えを巡らせていきたい」

妙心寺塔頭(たっちゅう)の退蔵院。600年前に建立された同寺で、新たな歴史が始まりました。本堂の襖絵を24歳の若き女性が描くことになったのです。



江戸時代初期に狩野了慶が描いた襖絵(ふすまえ)に代わるものを─。退蔵院の襖絵師として選ばれたのが、今春、京都造形芸術大学大学院を修了したばかりの村林由貴さん。

「在学中に開催した個展で先生に声をかけてもらったのがきっかけです。こんなチャンスがあるんだってうれしかった」

これまでアクリル画、鉛筆画などさまざまなジャンルの絵画を経験してきた村林さんは、実は、襖絵を描く水墨画の経験は皆無。「でも、高さ5m、横15mの壁に絵を描いたことがあったんですが、そのときピタッときたんです。私には大きい画面が合っているって」しばらくは退蔵院に住み、2013年秋の完成を目指す村林さん。まず、学ぶのは、禅。

「課題図書を読み始めていますが、禅って答えがないんですよね。自分なりの答えを見つけないと」。そのために大切にしようと思っているのが日常の生活なのだとか。「お寺で掃除もするし、ときには受付に座るかもしれません。“ここにいる”ことが重要なんです」退蔵院に住むまでは襖絵の構想があったそうですが、「今は決め付けないほうがいいかなと思っています。いろんなことを体験して、心を豊かにして考えを巡らせていきたい。焦らずに。でも本当はプレッシャーもあるんですよ。いろいろ考えると恐ろしい」。

ふんわりとした、かわいい女性。今後何百年も残るであろう襖絵を描こうという村林さんの第一印象です。そんな村林さんが、本堂にある64枚の襖にどんな世界を描くのか、楽しみです。

(文・内山土子

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