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試写室・劇場から

鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言

6月30日(土)から京都シネマで公開

©『鬼に訊け』製作委員会

匠のことばは専門領域を超え、
人生の奥義に踏み込んでいく

この柔らかな表情の棟梁(とうりょう)が、飛鳥時代から受け継がれた寺院建築技術に生涯を捧げた西岡常一さん。法隆寺の昭和大修理、薬師寺の伽藍(がらん)復興ほか多くの偉業を残した。

映画の冒頭で、彼が若い大工に木の削り方を教えるシーンが映される。一見、優しいと言ってもいい人当たり、だが、けして妥協はしない。「木は大自然が育てたいのち…そのいのちを建物に生かす。それがわたしら宮大工の務めです」と語る西岡さんは、鉄やコンクリートよりも、木の持つ能力を大いに評価する。どんなエラい先生が何を言ってこようが、彼の信念は揺るがない。その信念を貫くため、ちょっとしたおちゃめな側面まで見せてくれるのだが、彼の主張は、効率ばかりに目を向ける現代社会への鋭い批判となっていることに気づく。実にカッコイイじいさまなのだ。

仕事の中核となったのが、代々伝わる『法隆寺宮大工口伝』だが、これは人の世へのヒントともとれる。「堂塔の木組みは、寸法で組まず木の癖で組め」など、奥深い示唆に満ちている。ナレーションは石橋蓮司。監督は、ビデオ作品や著書で西岡常一を追い続けてきた山崎佑次。伝統的な産業や芸能がすたれることなく、力強く次代に継承されることを願う今こそ、必見の一作だ。

(ライター 宮田彩未 

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