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冷蔵庫の必需品!? おあげさ〜ん

室町時代から重宝されていました
冷蔵庫の必需品!? おあげさ〜ん

“おあげさん”の愛称で呼ばれる油揚げ。菜っ葉と炊いたり、みそ汁や鍋に入れたりと重宝するため、冷蔵庫にはいつもストックがあるという家も多いのでは。そんなおあげさんと京都について調べてみました。2ページ目では料理人によるアレンジレシピを教えてもらいましたよ。

「衣笠丼」がなか卯全店の通常メニューに
「衣笠丼」がなか卯全店の通常メニューに

「衣笠丼」と言えば京都の庶民の味。おあげさんのうま味が堪能できますね。
大阪で創業し、東京に本社を置く「なか卯」では、7月24日に「衣笠丼」を新メニューとして発表。全店(京セラドーム大阪店を除く)で通常メニューとして販売されています。
大きめにカットされた青ネギ、同店オリジナルの油揚げが使用され、こだわりの卵でとじられているそう。

軟水、地下水がおいしさの秘密
うま味を増す“だし”も人気の底上げに

「奈良時代、中国から豆腐が入ってきて、鎌倉〜室町時代には僧侶から庶民へと浸透していきました」と、京都聖母女学院短期大学の西彰子さん。都が京都に置かれていた時代が約1000年と長いことから、伝来した新しい食材などはまず京都に集まったそうです。

「豆腐作りには水が重要ですが、京都は軟水で、しかも水質・水温が安定した地下水が豊富だったことが、豆腐が京都で広まった大きな理由とされています」

油揚げの記述が書物に登場するのは、豆腐が一般的になってから後の、室町時代。「この時代に“調理・調味すること”が発展したことから、“揚げる”調理法が加わった油揚げが作られたようです」

では、油揚げが今も愛されている理由は—。

「京都の軟水で作る豆腐のうま味を生かした油揚げは、生ものの豆腐に比べて、揚げてあるために2日ほど日持ちし、さらに豆腐より軽いので持ち運びも便利、型崩れもしにくい、と庶民の間で人気が広まったよう」

目新しさや便利さだけではなく、油揚げには“調理してからの利点”が多くあったからとも。

「青菜と炊いたとき、カロテンと油揚げの油が一緒になり、コクが増して栄養の吸収が良くなるだけでなく、青菜の苦味をマスキングしてくれることで食べやすくなります。また、“だし”で炊くと油揚げがだしを吸い込むことで食べたときにうま味が増すなど、京都のだし文化も一役買っていたのだと思います。当時の庶民には不足しがちなタンパク質や脂質が油揚げで補え、栄養面でも重宝される食材でした」

長〜く、分厚いのは
京都オリジナル!?

京都の豆腐店などでは大阪に比べて長く、分厚いタイプを目にすることが多いはず。ただ、他府県ではこれほどの長さ、分厚さのものはそんなに目にしないよう。

京都府豆腐油揚商工組合・理事長の東田和久さんによると、「確かな理由は分かりませんが、生地を固める際に使う『型箱』の大きさによるのでは」と。現在の型箱から生地を取り出し、そのままタテに切ると、今の油揚げの大きさに近くなります。

理由のもう一つとしては、「京料理で煮物やあえ物などのいろんな料理に応用させるために、今の厚さ、形(長さ)がちょうどよかったのでしょう」(東田さん)。

ところで油揚げというと、下準備の「油抜き」が必要とされるのが一般的ですが、熱湯をかけると余分な油が取れ、煮込み料理をする際にダシのうま味が染み込みやすくなるといわれています。“油臭さ”もこれで減らせるとか。

「ただ、最近の豆腐店などではそのまま食べられるようにとの意識が高まり、揚げ用の油は新しく、保存状態を良くしています」と東田さん。「油抜きをすることで、反対に油のうま味が逃げていくことにもつながります。油揚げはカットして使うことが多いため、だしは切った断面から入りやすくなりますしね」。このひと手間は必要なさそうです。

教えてくれた人

京都聖母女学院短期大学
生活科学科 食物栄養専攻
准教授 西彰子さん

栄養学、栄養教育を専門分野とし、京都の食文化について学ぶ「京都食文化コース」を担当

久在屋
代表 東田和久さん

京都府豆腐油揚商工組合の理事長であり、西京極の豆腐店「久在屋」の代表。「油抜きをしない油揚げがあることを知ってほしい」

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