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空き家には、可能性がいっぱいです!

近所に、老朽化した空き家があると気になりませんか? わが家も空き家を所有しているけれど、住み手がいなくて…という人もいるかもしれませんね。今、全国的に増加しているという空き家。京都では、どのような〝空き家事情〟があるのでしょうか。

空き家率は京都市14.1%、宇治市9.8%

「空き家」とは、居住する世帯のない住宅のこと。借家人や購入者を募集中の住宅、別荘なども、5年ごとに全国で行われる「住宅・土地統計調査」で空き家に数えられています。

総住宅数に占める空き家の割合を表す空き家率をみると、京都市14.1%をはじめ、宇治市9.8%、長岡京市と向日市8.8%、城陽市8.7%。全国平均13.1%と比べると京都市は高め(いずれも総務省「平成20年住宅・土地統計調査」より)。ちなみに平成15年の同調査では、京都市の空き家率は13.2%なので、空き家が増えていることがうかがえます。

空き家の中で特に問題なのが、管理されずに放置されている物件です。老朽化による倒壊の恐れだけではなく、不審者や動物の侵入、放火、生い茂る雑草など、空き家の近隣に暮らす人たちへの影響が懸念されるのだとか。

そんな空き家の適正な管理を進めるため、条例制定などの対策をとる自治体が全国で増えています。京都市でも、この4月に条例が施行されました。条例の制定を目指す宇治市では、現在、パブリックコメント(市民の意見)を募っています。

高齢化が空き家増加の一因に

では、そもそもなぜ空き家は増えているのでしょう。

話を聞いたのは

井上えり子さん
京都女子大学家政学部准教授。「空き家をそのまま放置せず、活用すれば、地域にとって必ずメリットがあります」

「日本の人口が減少傾向にあるため、空き家が増えていくことは避けられません。一方、マンションの建設や郊外での宅地開発は今も行われているので、必然的に空き家はどんどん増えているのです」

そう話すのは、空き家問題の解決策について研究する、京都女子大学家政学部准教授の井上えり子さん。

「一人暮らしの高齢者の存在も大きいですね。所有者自身が高齢の場合、何かを決定したり、行動するのが難しいことも多く、その方が亡くなった場合、空き家のまま放置されることがあるんです。相続において複数の権利者がいる場合は、どのように活用するか意見がまとまらないまま…ということも」

その活用法にはどのようなものがあるのでしょうか。

「不動産業者による売却や賃貸もひとつ。空き家に若い世帯が入ることで、地域の担い手が増え、ひいては若返りや活性化につながります。また、地域のための施設として活用できれば、所有者にとっては地域への貢献になります」とのこと。

将来、空き家所有者になる可能性は誰にでもあると話す井上さん。「将来の所有者が困らないよう、今の持ち主は、家をどのように使ってほしいのかという意思を明らかにしておくことが大切です」

所有者の希望で市に寄付。祇園新橋の町家を活用へ

井上さんが話す、空き家対策としての〝意思表示〟がされていたケースを紹介しましょう。

昨年、祇園新橋(京都市東山区)にある町家が、亡くなった所有者と生前贈与契約を結んでいた京都市に寄付されました。

「明治中期に建てられた木造2階建ての町家を、維持管理して残してほしい。また、公共の利益になる施設として活用してほしい」というのが所有者の希望。京都市では、今後、京都の魅力を発信する施設として民間事業者による事業を展開予定です。

「空き家の寄付は非常にまれな事例ですが、所有者の意向をくんだ上で、民間の知恵と力を借りつつ建物を活用してきたいと思います」(京都市都市計画局の担当者)

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