ホーム > > 試写室・劇場から

試写室・劇場から

三谷文楽 其礼成心中(それなりしんじゅう)

8月7日(木)~17日(日)、京都劇場にて公演

今度は文楽にチャレンジ!近松も驚く三谷幸喜の遊び心。

舞台、映画、ドラマ、人形劇と、次々新しいジャンルに進出し続けている三谷幸喜が、今度は伝統芸能の文楽にチャレンジ。近松門左衛門の名作「曽根崎心中」をベースにした物語だが、三谷ならではのヒネリ技が、ただごとではない面白さだ。

元禄の世。醤油(しょうゆ)屋平野屋の手代・徳兵衛と、堂島新地の遊女・お初が梅田曽根崎天神の森で心中を遂げて以来、この地は心中のメッカに。そのため、森の入り口にある饅頭(まんじゅう)屋は縁起が悪いと客足が遠のいてしまう。ところがある夜、饅頭屋の親父・半兵衛が若い男女に心中を思いとどまらせたことから「曾根崎饅頭」として大繁盛! しかしそんな中、近松が新作「心中天網島」を書き、これがまた大ヒット。その結果、今や心中のメッカは網島に取って代わられてしまう。

基本的に文楽に喜劇は無いはずだが、話の奇抜さ、語りの中に「カップル」「エステ」などのカタカナ語が入り、饅頭屋の親父が面白おかしく踊り狂い、閑古鳥が「カア~」と鳴いて舞台上を横切るなど、三谷喜劇のテイストが実に楽しく盛り込まれている。伝統芸能としての文楽本来の形式を尊重しつつ、新しい風を吹きこんだ三谷幸喜の手腕と、それを受け入れた文楽界のふところの深さはアッパレ!

(文筆業・あさかよしこ 

このページのトップへ