京美人プロジェクト④:ゆっくり、やさしく 京言葉でおつきあい

京美人流 コミュニケ—ション術を身に付ける

日ごろのコミュニケーションに役立つ3つのポイントについて、
中島さんの解説を交えながら紹介します。

その1:場の空気を大切にする/会話の返しは肯定的に

「周囲への気遣いができて、一緒にいて居心地がよい」(やーい・34歳)のように、場の雰囲気を大切にするコミュニケーション術に、やわらかな京言葉はぴったり。

中島さんからは「まず、相手が言うことには、面と向かって否定するようなことはしません。せっかく言うてくれてはる人の立場を考えたら、お世辞には『おおきに』、間違った情報でも『ほんまにぃ』と、まず肯定的な印象の言葉を返します。

自分の意見は、謙遜しながら、一歩下がった立場から発言するつもりで話すと、相手はきつく反論されている気がせず、会話がスムーズに進むと思います。反対の意思を伝えたいときも、『うまいこといったらよろしおすなぁ』と。自分の発言で、場の雰囲気を壊すようなことなるのも、京都人はかなわんのです」。

その2:人間関係を損なわないようにしたい/えん曲表現を活用して

コミュニケーションで、人間関係を損ないたくないのは誰しも同じ。

「何か勧められても断りたいときは、『考えときます』と返す場合も。相手を立てつつ、自分の気持ちをやんわりと込めるところがポイントなんですが、近ごろは、言葉通りに取られてしまって、こちらの意図をくみ取ってもらえないこともあるのがさみしいですね」

また、こんな話も。「京都人は負けん気が強いので、自分から『負けたわ』とは言わない(笑)。『勝てんなぁ』っていうんですよ」

そもそも、人間関係を重視する京都では、日々のちょっとしたあいさつなど「声かけ」が大切にされています。「でも、他人ごとに深入りはしない。相手に無駄な気遣いをさせないようにするのが、京都人の基本姿勢だと思ってください」

その3:言いにくいことも、上手に伝える/相手の気持ちを察しながら話す

「場合によっては、自分が悪いわけではなくても『かんにんえ』『すんまへん』などの言葉をめいっぱい使うことがあります。相手の立場になって考えれば、気持ちを察することはできますから。それでも言わなあかんことは、一生懸命に伝えます」と中島さん。言葉から気持ちがにじみでてくるようです。

社会言語学が専門の龍谷大学教授・村田和代さん(下参照)は、「感謝と謝罪の両方の意味を持つのが『すんまへん』などの言葉。そういった言葉を挟みつつ、できるだけ間接的な表現で長めに話すと、相手の人の配慮が伝わり、会話の内容がソフトになるという効果もあります」。

京都人をつないできた京言葉

京言葉が人と人とのつながりに与える影響などについて、言語と社会の
関係について研究する龍谷大学教授の村田和代さんに聞きました。

龍谷大学政策学部教授の村田和代さん

「京言葉の特徴のひとつに、ゆっくりとした口調が挙げられます。このゆっくりとした口調、聞いているだけで、癒やされませんか? また、京都の人の会話には雑談が多い。といっても、無駄話のことではないんですよ。効率的な情報の伝達だけでは、コミュニケーションは成立しません。四季や行事、食べ物の話などを織り交ぜながらくりひろげられる会話は、人と人との〝潤滑油〟になっています。

かつての京都では、(1面の中島さんの話にあるような)歴史的な背景もあって、はっきりと自分の意見を言わない分、相手の言葉の真意をくみ取ったり、行間を読む推論力が発達していたはず。コミュニティーのつながりも強く、言わなくても伝わることが多かったと思います。現在は、移動がたやすくなりコミュニティー内の関係が疎遠に。また、メディアの影響なども重なり、はっきりと言わなければ通じない関係が増えたと思います。

京都にはついこの間まで都がおかれ、歴史的な価値や文化を今も大切に思っている人が多いですね。だからこそ、京都の人は、地元に対する意識が強く、京言葉や会話の中にもその気持ちがにじみでているのだと思います」

便利な表現、標準語になった京言葉も

 年齢にかかわらずよく使われている京言葉のひとつに「〜はる」があります。これは、尊敬語の「なさる」が、「なはる」→「はる」というように丁寧語に変化したもの。今では、敬語とはいえないくらいさまざまなシーンで使われている便利な言葉です。「相手のことを大切に扱っている感じがするでしょ?」と中島さん。
 現在の標準語には、かつて御所の女官たちが使っていた御所言葉がたくさんあります。特に多いのが単語の上に「お」をつける言葉で、「おむすび」「おじや」「おでん」「おひや」「おなか」など。今では、「お」を取ってしまったら意味の通じないものばかり。京言葉の歴史の長さを感じますね。

「京美人プロジェクト おさらい会」開催!

京美人プロジェクト1〜4を振り返って、みんなで〝おさらい〟しませんか? 当日は、歌人・林和清さんによる、お話「歴史に見る、京美人とは─」も。立ち居ふるまいの回の講師・柾木良子さんも登場して「冬の京美人レッスン」を実践で教えてくれます。

11月5日(水)午後2時〜4時、参加費は3000円(飲み物付き)。会場は、京都市内四条烏丸近辺で予定しています。
参加希望者は、10月24日(金)までに、下記のボタンより申し込みを。ただし20歳以上の女性に限ります。定員40人。応募多数の際は抽せん。当選者にのみ、電話かメールでお知らせします。

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