ホーム > > 試写室・劇場から

試写室・劇場から

ラブ&ピース

6月27日(土)からTOHOシネマズ二条で公開

©「ラブ&ピース」製作委員会

破天荒な物語が織りなす、捨てられていくものへの思い

今年に入って4作もの映画作品を仕上げてしまった園子温監督の創作意欲とバイタリティーには驚く。これはそのうちの1本だが、25年前に自身で書いた脚本をもとに、現代的な味付けを加えたという。突出したぶっ飛んだ感性、クライマックスに向けてテンションを上げて進んでいく物語の面白さ、時代を超えて共感を呼び起こす哀愁など、多様なエッセンスがからまり合って、強烈な印象を残す。

サラリーマンの良一は、周囲から見下され、いじめられる毎日を送っていて、思いを寄せる同僚の裕子に対しても極度に弱気だ。しかし、彼には人知れぬ夢があった。それは、ロックミュージシャンになること。そんなある日、良一はデパートの屋上で一匹のミドリガメと出会い、人生の奇跡的変換を果たすが…。

だんだんイヤミな男になってゆく主人公の日常。一方、並行して語られるのは、おとぎ話のような地下世界だ。捨てられたものが集う地下世界と、大事なものを捨て去ってゆく主人公の世界がリンクし、現代社会に対する園監督流“アイロニック・ファンタジー”の色合いを帯びてくる。

日本が誇る特撮技術を駆使した映像もこの映画の見どころ。出演は長谷川博己、麻生久美子ほか。地下世界のなぞの男を西田敏行が好演。

(ライター 宮田彩未 

このページのトップへ