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試写室・劇場から

もとの黙阿弥

9月25日(金)まで、大阪松竹座にて公演中

©松竹 (中央左より)片岡愛之助、貫地谷しほり

愛之助が喜劇に挑戦! 身代わりによる自分探しが心に染みる

身代わりや入れ代わりが引き起こす悲喜劇は、珍しくはないけれど、身代わりを体験したことで、自分の知らない世界を知り、「自分は一体何者なのか」を自身や客席に問いかけるという、井上ひさしらしい奥行きを感じさせる作品である。

文明開化の世。浅草七軒町で、「よろず稽古指南所」を開いている大和座の座頭・飛鶴(波乃久里子)と番頭格・飛太郎(大沢健)のところに、男爵家の跡取り・隆次(片岡愛之助)と書生の久松(早乙女太一)が、西洋舞踊を習いにやってくる。隆次が、姉の賀津子(床嶋佳子)が勝手に決めてしまった縁談の相手と、舞踏会で踊ることになっているからだ。その縁談相手の長崎屋のお琴(貫地谷しほり)もまた女中のお繁(真飛聖)と共に、飛鶴のところへやってきた。しかも、この二人、見合い相手の人柄を確かめるため、入れ替わって相手と会うことにしているという。ところが、隆次と久松も同じように主従入れ替わって現れたものだからから、もう大変!

劇中劇をたくみに織り込みながらの、自分探しのシーンは抱腹絶倒もの。しかもその劇中劇で、“下手な芝居”を上手に演じるには、俳優にかなりの実力が必要なことを実感。旬の愛之助には、そんなすごみも感じられて、大いに楽しむことができた。

(文筆業 あさかよしこ 

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