検診、健診、このメッセージを受け取って

「若いうちから検診へ行こうという友人の言葉で意識しました」MNさん(38歳)

若くても病気になる可能性はあります。検診の無料対象年齢になる前でも受けてほしい。

がん検診について気になってはいるものの、受診する決心がつかない…。MNさんもそんな一人でした。

「『検診に行ったほうがいいよ』という友人からのアドバイスを受けていたため、『行かないとな』という気持ちはありました」。実はMNさんの母親は乳がん経験者。そのため、早めにとすすめてくれたのだそうです。

そんなときに見かけたのが、「リビング京都」に掲載していた乳がんの検診受診率向上のためのピンクリボンのイベント。乳がん検診が1000円で受けられるというものでした。友人の助言も頭にあったので、〝念のため〟と軽い気持ちで申し込み、マンモグラフィーやエコーの検査を受診。

「当時は36歳と若かったこともあり、検査をしても何もないだろうなと思い込んでいました」。ですが、その後送られてきたのは、「精密検査が必要」という通知。

驚いたMNさんは、すぐに病院で診察・検査。細胞の検査もすることになりましたが、「検査の結果は幸いなことに〝問題なし〟でした。でもその結果が出るまでの1週間は、『悪性だったらどうしよう』と不安で仕方ありませんでした」。

それからは主治医の指示に従って、半年後、1年後と、定期的に検査を受けています。

「私の住んでいる市の無料検診は40歳からなので、それまではしなくてもいいものだとばかり思っていました。細胞の検査結果がでるまでの1週間の不安な気持ちを思い出すと、年齢は関係なく、早めに検診を受けたほうがいいなと感じました」

「母をがんで亡くした経験から、子どものために欠かさず受診」SKさん(47歳)

子どものために欠かさず受診。健康を確認することは、家族の安心につながると思います。

幼いとき、母親を子宮がんで亡くしたSKさん。

「具合が悪いと思いながらも、時間がとれず、病院に行かなかったのだそうです。それで病気が分かったときにはもう手遅れで。余命半年と宣告されましたが、3年闘病した末に、31歳で亡くなりました」。SKさんはまだ8歳だったそう。

成人したSKさんが子宮がんの検診を受け始めたのは26歳。

「母のことも頭にあったので、独身のころから子宮がん検診は毎年受診していました。40歳を過ぎてからは乳がん検診も受診しています。今は結婚して子どももいますから、すべては子どものため。母親の健康は子どもの人生を左右します」

母のがんが分かったとき、子どもながらに覚えていることがあるそうです。

「バレエを習いたいと思ったとき、母は入院中でした。『そんなわがまま言えないな』と感じ、窓ガラス越しにバレエの練習を見つめるだけ。やっぱりお母さんが元気じゃないと、家庭が暗くなってしまう。子どもにもつらい思いをさせてしまうと思うんです」

これまで受診した子宮がん検診で、一度だけ再検査になったことがあるというSKさん。

「結果、異常なしだったものの、再検査をすると聞いた父が泣いてしまって。つらい体験の記憶として残っていたのかもしれません。毎年検査を受け、何もないという結果を確認することが幸せです」

「〝痛み〟を気にしすぎて検診から遠ざかることがないよう、伝えたい」はんこさん(38歳)

検査は無痛ではないけれど短時間の我慢!必要以上に怖がらないで。

検査の痛みや苦痛が嫌で受けていないというケースもあるのでは。

「受けた人が痛いと言っていたとか、〝痛い〟という情報が独り歩きしているような気がします。そういった情報が受診を遠ざける原因になっているのかも」と言うのは、乳がんの検診を毎年欠かさず受けているはんこさん。

はんこさんは31歳のとき、自分で胸にしこりがあるのに気づいて、病院へ。しこりはがんではなかったものの、それ以来、触診、マンモグラフィー、エコーの検査と、乳がんの検査を受けています。はんこさんにとっては、検査時の痛みはそれほどでもないのだとか。

「もちろん、無痛ではありませんし、気持ちのいいものではありませんが、短時間で済むこと。気にしすぎて検診を受けないで、病気の発見が遅れてしまってはもともこもありません。もし何かが見つかっても早期のこともあるのですから受けてほしいです」

検査のときの痛みの感じ方には個人差はあるかもしれません。必要以上に怖がらないように、そして周囲を怖がらせ過ぎないようにしたいですね。

「痔(じ)だと思って受けた検査でポリープが発見され、切除することに」AOさん(41歳)

検査の内容によっては「恥ずかしい」と思うことも。でも優先すべきは「早期発見」です。

検診の内容によっては恥ずかしいと感じてしまう人もいるかもしれません。ですが、「それでも検査を受けてほしい」とはAOさん。

AOさんは以前から排便時に出血があり、当初、総合病院で痔の診断が下されたのだそう。

「それ以降も出血は続いていたんですが、時間がなく、薬局で買った薬を使ってしのいでいました」

そんな日々が続いていた32歳のとき、トイレでいつもより多い鮮血が。そこで大腸の内視鏡検査(大腸ファイバー)を受けることに。その検査で良性の大腸ポリープが発見されて切除し、3日ほど入院したのだそう。

「出血は痔のせいだと思っていたんですが、ポリープのせいもあったのかもしれません。手術後、しばらくは大腸ファイバーの検査を病院で定期的に受けていましたが、先生にそんなに頻繁にしなくても良いと言われて、今では市の検便の大腸がん検診を毎年欠かさず受けています」

検査を受け、悪性になる前に切除できて良かったとAOさんは振り返ります。

「最近女性の痔も多いそうです。恥ずかしくて痔で病院に行かない人もいるかもしれません。でも私は思い切って行って早期発見ができた。それで命が助かったかもしれないんです」

足が向きにくい検診や病院があるかもしれませんが、早期発見が大切ということがAOさんの体験から伝わってきます。

がん検診で受診率が特に低いのは子宮頸(けい)がん

がん検診の受診率 ■胃がん検診	35% ■肺がん検診	38.2% ■大腸がん検診	37% ■乳がん検診	35.1% ■子宮がん検診	27.8%

「平成27年度京都府がん検診受診率調査報告書」の「がん検診の受診場所別構成割合(がん検診の種類別)」より抜粋
※平成26年度(平成26年4月1日~27年3月31日)の受診状況を調査。ただし乳がん検診、子宮がん検診は平成25年4月1日~27年3月31日

「がんは2人に1人がかかると言われるほど身近な病気ですが、早期のがんにはほとんど自覚症状がありません。早期のうちに治療を受ければ高い確率で治すことができるため、定期的ながん検診が重要です」と、教えてくれたのは京都府健康福祉部健康対策課主事の原田憲一さん。

「京都府の検診受診率はほぼ横ばいで、未受診の理由としては、受ける時間がない、費用がかかるなどの検診の負担感や、検診に対する意識の低さが理由として挙げられています。また20代女性に限定すると、申し込み方法を知らないという人の割合も高くなっています。そこで京都府が進めているのが、検診に対する意識の向上を図るための啓発です」

特に子宮頸がん検診については若年層女性への啓発を図るため、企業や保健医療団体などと連携したイベントの開催や街頭啓発などに取り組んでいるそうです。

取材を終えて━

読者の声から感じた検診に足が向かない理由は、大きく分けて3つ。「怖い」「痛い」「恥ずかしい」でした。その気持ち、分かります。

記者もちょうどこの取材を行っていたころ、「乳がん検診」「大腸がん検診」「胃がん検診」を受けました。検診に行く日はやや気持ちも重く、ちょっと憂鬱(ゆううつ)。ですがみなさんの話を思いだし、「これも早期発見、何かあったら治療すればいいんだ」と奮い立たせました。家族や友人と楽しく過ごしたり、仕事を頑張ったり。これも健康であればこそですものね。

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