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腸内環境、整えるには

読者の疑問に専門家が答えてくれました

腸内環境にかかわる読者の悩みや疑問に、1面で登場の内藤裕二さんと、京都医療センター・栄養管理室長の西田博樹さんに答えてもらいました。

腸に老化はありますか?

(olive・45歳)

「腸自体が老化するというよりも、加齢で免疫力が衰えてくると善玉菌が減り、悪玉菌が増えるため腸内環境のバランスが崩れやすい傾向があります」と内藤さん。
加齢をカバーするためにも、積極的に腸の健康維持に努める必要がありそうですね。

ヨーグルトを毎日
食べると体によいのでしょうか?

(みーちゃん・35歳)

みーちゃんさん以外からも、「腸のためにヨーグルトを食べている」という声は数多く寄せられていました。

ヨーグルトに入っているビフィズス菌や乳酸菌は、善玉菌の一つ。毎日ヨーグルトを食べているという西田さんは、「さまざまな菌の名前をうたった商品が市販されていますが、その機能を購入の目安にしてください。飲むタイプでも食べるタイプでも、あまり差はありません」とのこと。

「ただし、ビフィズス菌や乳酸菌は熱に弱いので、摂取したすぐ後に熱いものを食べたり、熱い料理に加えたりするのはよくないですね。また、ヨーグルトを一定量食べ続けると、腸はその量に順応していきます。ところが食べるのをやめてしまうと、腸は『足りない』と認識し、腸内環境のバランスがかえって崩れてしまうことも。効果が出るまで2カ月くらいはかかると考えて、少量ずつでも毎日こつこつと食べ続けるのがいいですよ」

便秘気味で困っています。
解決策はありますか

(ほたるいか・34歳)

「腸内はとてもデリケートなので、ちょっとしたストレスや偏った食生活などもすぐに影響します」と内藤さん。
便通異常は腸内環境が乱れているサイン。異常が起きる要因の一つが悪玉菌です。悪玉菌の代表選手には、食物のカスを腐敗させるウェルシュ菌や細菌毒素を生成するブドウ球菌、発がん物質を産生する有毒な大腸菌があります。悪玉菌は肉類のタンパク質や脂肪などをエサに生育し、有毒物質を放出します。

この悪玉菌の悪さを抑えるのが、善玉菌。ビタミンを合成するビフィズス菌、消化吸収を補助したり、有害なばい菌の感染を防御する乳酸菌が有名です。
「善玉菌は、発酵の作用で食物を分解。その結果、乳酸などが合成され、腸の動きを活発にします。善玉菌を増やすには、乳酸菌やビフィズス菌を含む食品や食物繊維の豊富な野菜を取り入れた食生活が大切です」
西田さんも、「食物繊維は体内で消化されず、善玉菌の働きを助けてくれます」と話します。

食物繊維を取るうえでの注意点は?
「腸内細菌にバランスがあるように、摂取する食物にもバランスが大切です。食物繊維には、腸の粘膜を守る効果がある“水溶性食物繊維”と、胃や腸で水分を吸収して膨らむ“不溶性食物繊維”があります。1日に摂取する食物繊維は、レタスのような淡色野菜や果物といった水溶性が7割、ホウレンソウやニンジンなどの緑黄色野菜やゴボウといった繊維質の野菜など不溶性が3割が目安です。緑黄色野菜はビタミンなどの栄養素が豊富なので、『健康によいからたくさん食べよう』と考えてしまう人も。大切なのは、淡色野菜も含めていろいろな種類の食物繊維を摂取することです」

同じ食事をしていても、
夫だけよく下痢をします。
体質でしょうか?

(まる子・44歳)

下痢は、腸の免疫力が自己防衛を発動した結果、腸に侵入してきた有害な物質を体外に排除する働きです。
「同じ食事でもどのように影響をするかは、腸内環境によって変わります。実は、もともと胎児は腸内細菌を全く持っていないのです」と内藤さん。

「母体の産道を通って生まれてくるときに、産道に分泌されているビフィズス菌が胎児の口や鼻から入って、赤ちゃんの腸に住み着くのが最初の腸内細菌なんです。5歳ごろには腸内環境の基礎が出来上がります。幼児の間に、身の回りにあるいろいろな菌に接触することで、腸内環境は体外から入ってくる菌への抵抗力を身につけ、体に有害な菌を見分けられるようになるといわれています。不衛生すぎる環境は健康を損ねますが、赤ちゃんが“汚いものをなめる”行為は、本能的に腸内環境の免疫力を鍛えようとしているのだと思いますよ」

では、大人になってからではどうしようもないということでしょうか。
「いえいえ、大人になってからでも対策できるのが腸内環境のすごいところ。腸内細菌の影響で腸管免疫が正常に働くわけですから、腸内環境を整えるのが大切です。一番重要なのは食事ですが、個人差がありますので、十把ひとからげにはいきません。善玉菌のエサになる食物繊維も、腸内環境の状態によっては分解できず、過剰に反応してしまうことだってありますからね」

よい菌、食物繊維、よい油で 腸内環境を健康に

患者の健康を食事でサポートする専門家として、「腸内環境が良好なら、便通事情も良好です」と西田さん。
腸内環境のためのポイントは3つ。読者の疑問に答えて紹介した「よい菌を増やす」「食物繊維をとる」という2つのほかに、「よい油を適度にとる」。これは、便をなめらかにして腸内での付着を緩和するため。不飽和脂肪酸を含むオリーブオイルがおすすめだとか。
「便のもとになる食物繊維をはじめ、食品構成のバランスのとれた食事が健康によいことは知られていると思います。腸内環境も意識して、食生活を考えてほしいですね」

京都医療センター・栄養管理室長の西田博樹さん

京都医療センター・
栄養管理室長の西田博樹さん
「メタボ外来のやせるレシピ」
(同センター)の栄養監修も担当

混ぜるだけ!西田さんおすすめレシピ「かんたん混ぜ混ぜヨーグルト」

無糖ヨーグルト…200g ※乳酸菌飲料130ccでも可
きなこ…30g(大さじ山盛り2杯)
 ※アボカド半個、キウイ1個、リンゴ半個のいずれかでも可
オリゴ糖…20g(大さじ1.5杯)

快便には、善玉菌と一緒に、善玉菌を増やす食物繊維とオリゴ糖の摂取がおすすめです。レシピは1日分の摂取量。
作り置いて数回に分けて食べてもいいですね。

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