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試写室・劇場から

人生タクシー

5月20日(土)から京都シネマで公開

©2015 Jafar Panahi ProductionsS RESERVED.

怒りと悲しみを胸に秘め、ユーモラスに綴る人生スケッチ

イランのアッバス・キアロスタミ監督が昨年亡くなったのは実に惜しいことだったが、そのまな弟子と呼ばれるジャファル・パナヒ監督の心意気が伝わってくる新作。彼は反体制的との理由で、イラン政府から“20年間の映画監督禁止令”を受けつつも、めげずに創作活動を続けている。

本作では、自らタクシー運転手となり、さまざまな人たちを乗せてテヘラン市街を回る。死刑について激論になる男女、ワケありの金魚鉢を運ぶ年配女性の二人組、イランで上映可能な映画を作るんだという小学生の姪(めい)ほか、それぞれのドラマを、車のダッシュボードに設置したカメラがとらえていく。

やがて、小話の合間から、庶民と呼ばれる人々の生を見つめる、監督のまなざしが浮かび上がってくる。そこには、“反体制の過激さ”なんかじゃなく、ひょうひょうとした、しなやかな強さが宿っているなと思う。さりげなく語られる言葉に、彼の映画愛を確かめてほしい。本作は、一昨年のベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた。

(ライター 宮田彩未 

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