最近、よく見るこのキーワード AIって何ですか?

京都発 AIを活用して、こんなことが可能に!/京都に拠点を置く企業でも、AIを活用した製品が研究・開発されています。ウェブサービスやロボットなど、社会が便利に、そして面白くなるAIがありますよ。

オムロン

卓球の上達を助けてくれる頼れるコーチ

オムロン写真・イメージオムロン

スマッシュ予測機能を担当した丸山さん(右)。「フォルフェウス」は同社のさまざまな製品を組み合わせて作られています(一般公開は行われていません)

記者がロボットに向かって卓球のボールを打つと、3本のアームが動いてラケットが移動。コンと打ち返してきました。さらにその球を記者が打ち返すと、また同じようにラケットが動きます。

これは、オムロンが開発した卓球ロボット「フォルフェウス」(※)。
「3台のカメラがついていて、そのうち1台は人の動き、2台はボールの位置を検出しています。ボールの位置は1秒間に80回更新して、ボールがどこに飛んでくるのかを予測し、打ち返しています」と、技術・知財本部センシング研究開発センタ画像センシング研究室の丸山裕さん。

「これは4代目で、新たにスマッシュ予測機能が加わりました。構え方などの体の動きを見て、スマッシュが来ることを予測します」
このロボット、「最初の卓球コーチロボット」としてギネス認定を受けています。

「少しでも長くラリーを続けて、上達をサポートすることが目的です。相手のレベルを判定し、打ちやすいところに返球してくれます」とは、技術・知財本部企画室戦略推進課の北村陽子さん。

同社の技術は、自動車の安全でも活用が期待されていると北村さん。
「実装されるのはもう少し先ですが、ドライバーの動きをAIが見て、『眠そうだな』『運転に集中していないな』などと判断して、何らかの警告を出すという技術はすでに発表しています」
※取材時は研究用のマシンを使用

島津ビジネスシステムズ

桜の開花状況をより正確に予測

島津ビジネスシステムズ写真・イメージ

奥山さん(右)と有本さん(左)。このシステムでは、スポットごとに開花状況や満開日をチェックできます。七分咲きや散り始めといった細かな状況まで、全国約1000カ所、京都市内では17カ所の情報が公開されています

島津製作所のグループ会社、島津ビジネスシステムズの気象・防災グループは、今年の桜の開花予想にAIの技術を取り入れました。

そもそも桜の開花予想は、気象庁で使われている式があり、そこに緯度や海岸からの距離、1~3月の平均気温の平年値などを入れて算出するのが一般的なやり方だとか。

「これまでは、その式にアメダスの情報を加味するなど、私たちで工夫をして予想していました。ですが、これには式を計算する人手が必要になります。それに、全国一律の式ですので、場所ごとの個性までは計算できませんでした」と、同グループ部長の奥山哲史さん。

そこで注目したのがAI。過去10年分の開花日や満開になった日のデータ、アメダスの気温といった気象データを機械学習させ、今年の開花日や満開日などを予測することに。昨年までの開花日の平均適中率を比べてみると、従来の計算式の場合は47・5%でしたが、AIでは、74・5%にアップ(※)。これには、予測の頻度も関係していると奥山さん。

「以前のやり方では2週間に1度、計算し直していましたが、AIの場合は、1日に4回、最新のデータが入るたびに予測を修正します」

このほかAIを使って、強い雨の接近を知らせる「アメミル」というスマートフォン用のアプリも開発。
「気象レーダーと衛星の雲画像とを解析して、今後雨足が強くなるので注意してくださいとAIが呼びかける仕組みです」(同グループ・グループリーダー有本淳吾さん)
※従来の式を使った桜の開花予想の平均適中率は2011年~17年の平均。AIを利用したものは08年~17年の平均適中率

FKAIR

対話しながら街歩きを楽しめる〝チャットボット〟

FKAIR写真・イメージオムロン

尾藤さんとENAの等身大パネル。ENAは、京都に住む20歳の大学生という設定です。イラスト制作者は電柱棒さんです

AIと対話しながら観光スポットなどを探せるのが、FKAIR(エフケアー)が開発した「Kyoto Guide ENA」。現在は英語版が登場。京都府南丹広域振興局と協力し、JR「亀岡」駅の観光案内所に専用端末を置くなどして実証実験を行っています。

例えば「I want to go to Kinkakuji(金閣寺に行きたい)」と入力すると、このシステムのキャラクターであるENAから、「What is your starting location?(出発地点はどこですか?)」と質問が返ってきます。このように、対話をしながら答えを見つけ出す「チャットボット」というタイプです。持ち歩けるiPadやiPhoneなどの端末でも使えるので、移動中もシステムを使えます。

「このシステムには、観光名所や京都の気候、土産物情報など数千のデータが入っています。質問が入力されると、その質問にひもづく答えを返す〝ルールベース型〟というAIを使っています。実証実験の段階ですが、今後は、機械学習型と合わせて、音声でやりとりをしたり、イラストを3次元にしたり。グレードアップをしていく予定です」と取締役COOの尾藤美紀さん。

同社はAIを使って発電や消費電力の予測を行う会社。
「チャットボットを通して得た位置情報は施設内の混雑予測などにも活用され、環境に優しいスマートシティーにも利用していくことを目指しています」(尾藤さん)

AIについても学べる学部が登場/京都産業大学に、今年4月、情報理工学部が開設されました。この学部は、多様化する情報化社会に必要な10のコースを用意。AI関連の数学や情報技術、AIを活用する関連技術やシステムについても、学問的に捉え、教育や研究体制を整えていく予定だそう。

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