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インタビュー

俳優 伊吹吾郎さん

1946年、北海道生まれ。69年に「無用ノ介」でテレビデビュー。
東映のやくざ映画や時代劇、「必殺仕事人」などテレビドラマにも多数出演

「男の一生懸命な生きざまをしっかりと見てほしい」

日本映画の流れを変えたともいわれる映画「仁義なき戦い」(1973年)。公開から45年がたったいま「この映画があったからこそ生まれた」と原作者自らが語る、昭和後期を舞台にした警察小説「孤狼の血」を東映が映画化、5月12日から公開され、話題を呼んでいます。豪華俳優陣が顔をそろえる中でただ一人、時を超えてこの2作品ともに出演しているのが、俳優・伊吹吾郎さん(72歳)です。



映画「孤狼の血」はT・ジョイ京都ほかで公開中。監督:白石和彌、原作:柚月裕子(「孤狼の血」角川文庫刊)、出演:役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介、伊吹吾郎ほか

「いまの時代に、東映もよくぞ撮影に踏み切ったなと思いますよ。45年前といまでは、世の中がずいぶん様変わりしている。そんな中で、この映画はまさにリアルを追求してきた『仁義なき戦い』の流れをくむ作品。

役所さん演じる大上刑事はいわゆる暴力刑事、松坂桃李が演じる一流大学出身の日岡刑事とは相いれないやり方。それにからむ尾谷組や広島仁正会。それぞれが皆、自分をよしと思ってやっている男たちの、命をかけたぶつかり合い。撮影準備をしてきたスタッフも、われわれ役者もまた同じです」

伊吹さんの役どころは、服役中の尾谷組組長。面会シーンでの威厳に満ちた演技に「何度か刑務所に慰問にいかせていただいたこともあって、そこに流れる空気とか、感じたことがいかせているのかもしれませんね」

俳優歴55年のなかで体得したものすべてが、役者としての厚み。

テレビドラマでは、昨年、中高年層に人気を博した「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)で、藤竜也さんたちと若者相手に大立ち回りを見せましたが「立ち回りの後、別の部屋に入った途端、ハァハァ言うシーン。あれは演技じゃないですよ(笑)」

分厚い胸板に年齢を感じさせない、がっちりした体形は「23歳からずっとジムに通っていて、いまも週に2回ほど。サボるときもありますけどね、ただ60歳過ぎてからは元に戻るのに時間がかかる」。そう言いながらも「(お酒は)毎日飲むんですよね、これが。5~6年前から、水割りが頼りなくなっちゃって、いまはロックで」と、ちゃめっ気のある笑顔で話します。

京都は大きな存在 家族より長く一緒にいる

「23歳から54歳まで、ほとんど太秦の撮影所を拠点に撮影していました。〝京都”とは、家族といるより長い」

17年間、格さんを演じた「水戸黄門」(TBS系)では「川沿いといえばほとんど嵐山の土手か亀岡で(笑)。17年間もやっていると、そのうち草木も育って昔は向こう側が見渡せたのに、何も見えなくなってしまったこともありました」。

今後は「映画やドラマはもちろんですが、2~3年に1回は舞台をやりたい。舞台は目の前でリアルに反応がわかりますから」。

最後に、大人タノシ世代、特に定年を迎えた夫を持つ女性にメッセージを。

「多くの男は、家族のために一生懸命働いてきたと思う。だから、どんな形でもいい。どうぞ癒やしてやってください」

(文・山舗恵子

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