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インタビュー

映画監督 周防正行さん

1956年東京都生まれ。立教大学卒。映画監督。
1996年「Shall we ダンス?」で日本アカデミー賞13部門を独占受賞。妻は草刈民代。

いくつになっても変わらない 映画作りの源は〝驚き〟

 映画「Shall we ダンス?」で一躍脚光をあびた映画監督・周防(すおう)正行さん。「シコふんじゃった。」や「舞妓はレディ」 では、日本の伝統文化に実直に熱く向き合う人々の姿を描いてきました。12月13日には、5年ぶりに挑んだ最新作「カツベン!」が公開されます。無声映画時代の活動弁士をテーマにしたもので、さらに斬新で、エネルギッシュな映画に─。周防さんの素顔に迫りました。



©2019「カツベン!」製作委員会

映画「カツベン!」
無声映画時代に、活動弁士を夢見る青年の青春を描く。12月13日(金)公開予定。 監督/周防正行、脚本・監督補/片島省三、出演/成田凌、黒島結菜ほか

かつて野球少年だった周防さんは、肘を痛めたことから野球をあきらめ、文学、映画、演劇に興味を持つようになりました。そして、立教大学で「映画表現論」を学んだことから、今度は映画を作ることに興味を持ち始めます。そうして大学卒業間際に、バーで飲んでいた映画監督の高橋伴明さんに「僕を助監督にしてください」と直談判、即採用に。こうして高橋さんをはじめ、若松孝二さんらのもとで助監督として修業を積み、監督を務めた「ファンシイダンス」(1989年、大映)で注目を集めると、次々と話題作を発表。

「僕の映画作りの源は“驚き”にあるんです。例えば、禅の修行をする今どきの若者、学生相撲の現実、社交ダンスの世界、祇園の舞妓さん事情、刑事裁判、命の現場…と、僕が知って驚いたことを、作品として表現してきました」

還暦を過ぎた今も、「誰かに言いたくてしかたがない“驚き”を待っている」という周防さん。62歳での最新作は、12月公開の映画「カツベン!」(東映)。

〝カツベン〟とは、無声映画の上映時に、楽士の奏でる音楽と共に、独自の語りで映画を説明し、観客たちを熱狂させていた、活動弁士のこと。

「活動弁士は、日本で生まれました。海外にはない、日本独特の存在なんです。それは、日本人が古くから琵琶法師や浄瑠璃、そして落語、講談、浪曲など、語りによる伝統芸能になじんでいたということが背景にあるのでしょう。僕は、この〝驚き〟をもとに映画を作りました。物語の展開、アクション、笑いなど、当時の活動写真を存分に意識しましたよ」

新しい世界に踏み入って変化を楽しんで

今回は、太秦のオープンセットでも撮影。

「京都は排他的だといわれていますが、今回お世話になった京都の撮影所の人たちは、あまりにも優しくてね(笑)。それは、ここでいままで培ってきたものを、このまま終わらせてはいけないという、気持ちの表れだと思います。僕はいつか、京都撮影所に居座って、ここの技術を存分に生かし、オーソドックスな時代劇を撮ってみたい」

そんな周防さんが今、仕事以外に楽しんでいるのが、草野球!

「僕が一番年上かな。いろんな年代が一緒になって、楽しいですよ。昔痛めた肘も、全然痛くないの(笑)」

大人タノシ世代にもメッセージを─。

「これまでの自分になかった、新しい世界に足を踏み入れてみるのも、いいかもしれませんね。そこで自分がどう変わっていくか。それは、すごく楽しいじゃないですか」

(文・あさかよしこ

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