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子どもたちを見守り、はぐぐむ地域の大人たち

夫婦共働きやひとり親世帯が増えている現代、家族だけでは子どもに目が行き届かないことも。そんな中、「社会全体で子どもを見守り、はぐくもう」という動きが全国的に広まっています。たとえば京都市の「子ども食堂」の数は、市が把握しているだけで市内に約80カ所と、一昨年の約2倍に増加しているそう。ボランティアとして子どもたちに関わる人々を取材し、その思いを聞きました。

食事だけではなく、マナーを教えることも

長谷川裕子さん(44歳)

子ども食堂(向日市)

配膳はセルフサービス。食器を下げに来た子どもたちに、「おいしかった? はい、デザート」と手作りのパウンドケーキを渡す長谷川さん

料理はすべて手作り。家庭の味よりちょっと特別、を意識しているそう

午後5時、子ども食堂「向日市さくらきっちん」がオープンしました。赤ちゃんから小学生まで、たくさんの子どもたちが親と一緒に訪れ、30分後には満席に。厨房(ちゅうぼう)で、本日のメイン「きのこのクリームパスタ」を作っているのが、長谷川裕子さんです。

こちらを立ち上げたのは、長谷川さんの妹、桃井友美さんほか2人の母親たち。子どもの貧困、孤食などが増加するなか、「みんなでごはんを食べて、ほっとできる居場所を作りたい」という思いからでした。それに共感した長谷川さん。料理好きを生かして、2年前から調理担当として参加しています。

調理の合間にも、なるべく子どもたちとコミュニケーションを取るようにしているそう。時には、「きちんと『いただきます』って言おうね」など注意をすることも。

「続ける間に子どもたちがあいさつができるようになったり、今日あったことを話してくれたりと、うれしい変化も見られるようになりました」

長谷川さんは「食事を提供するだけではなく、ともに子どもを見守る」という気持ちで、毎回厨房に立っています。

向日市さくらきっちん

「あすもあ 向日市女性活躍センター」(向日市寺戸町中ノ段16-7)にて、毎月第2・4金曜日午後5時〜7時30分に開催(第4金曜日は予約制)。子ども10円(中学3年生まで。小学生未満無料)、大人100円。大人のみの参加は不可。詳細は下記フェイスブックにて。
https://www.facebook.com/muko.kodomo
〈問い合わせ〉

安全第一、みんな無事に家に帰ってほしい

奥野康孝さん(66歳)

下校見守り〈久御山町〉

子どもたちが車や自転車に接触しないよう、車道との間に入って一緒に横断歩道を渡る奥野さん

「君ら何年生や?」。信号待ちの間は気さくに声掛けも

久御山町佐山、国道1号線近くの交差点。「4差路になっているから、注意して渡らないと」とは奥野康孝さん。毎週1日、ここで佐山小学校の子どもたちの下校を見守っています。

始めたのは今年3月。町の情報誌で佐山小学校運営協議会が「佐山小学校見守りボランティア」の募集を行っていることを知り、応募しました。昨今の子どもが巻き込まれた大きな交通事故も気になっていたそう。

子どもたちが下校してくると、大きな声で「おかえり」と自分からあいさつ。「顔を覚えてなじんでくると、運動会がどうだったとか、今日はプールで泳いだとか話してくれる子もいますよ」

離れて住んでいる孫がいるという奥野さん。その孫に話しかけるように接しているといいます。「背が伸びたな、しゃべり方がしっかりしてきたなとか、子らの成長を感じながらやっています」。

ひどい雷以外は、どんな天気でもここに立ちます。「雨の時はちょっと大変かな。まあ、子どもが好きやしね」

佐山小学校見守りボランティア

交通安全、犯罪抑止を目的に、久御山町佐山小学校区の通学路11カ所で下校時の見守りを実施。「令和元年度京都府防犯まちづくり賞」受賞。
〈問い合わせ〉TEL:0774(44)8829=同会代表/林沼さん

気持ちが吐き出せる『居場所』になれたら

羽仁遼さん(24歳)

学習支援〈山科区〉

羽仁さんは歴史学部出身。社会科が苦手な子にはおもしろいエピソードなども交えて教えているそう

「まずは相手を受け入れて認めること、そして自分なりに伝えることを大切にしています」

数学の教科書を広げて、問題を解き始める中学生の男子。横にすわり、羽仁遼さんは黙って見守ります。中学生の手が止まると、しばらく待ってから、小さなホワイトボードを使って丁寧に説明を始めました。

毎週金曜日の夜、「山科青少年活動センター」で行われている学習会。羽仁さんは、昨年2月からここで「学習サポーター」として活動を始めました。通っていた大学で募集告知を見たのがきっかけに。

教えるのは、さまざまな事情で家庭では学習環境が整わない中学生たちです。

「担当する子は毎回違います。わからないところをすぐに聞く子もいれば、なかなか発することができない子も。一人一人に合った教え方をするようにしています」

時には学校のグチをひたすら聞いたり、施設の設備を使ってテニスや将棋の相手をしたり。「勉強するだけではなく、ここを『居場所』と思ってもらえるようにしたいんです」と話してくれました。

京都市ユースサービス協会

京都市の委託を受け、青少年の健全育成のための社会参加と自主的な活動の機会を提供し、必要な支援を行います。主に中学生を対象とした学習支援は、市内7カ所の青少年活動センターのほか、計18カ所で実施。
〈問い合わせ〉TEL:075(213)3681

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