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インタビュー

コーヒー職人 猪田彰郎さん

コーヒーポットを左手、ミルクピッチャーを右手に持ち、同時にカップに注ぐのが、猪田さん流。
独自にブレンドしたコーヒーの香りが広がります(撮影/竹中稔彦)

15歳の気持ちに戻り
毎日ワクワクしています

「イノダコーヒ三条店」での勤務、全国での講演会。「コーヒー職人」として65年のキャリアを持つ猪田彰郎さんが、昨年秋から新たな挑戦を始めました。



「僕は、15歳のころからずっと立ち仕事。だから、座ってるほうがしんどいくらい」─そう言って笑う、猪田彰郎さんは、現在79歳。

昨年11月から、中京区の授産施設「リ・ブラン京都中京」(中京区三条通油小路東入ル)で、月・火・木・金曜の午前10時〜午後4時、館内の喫茶店で働く障害のあるスタッフに、コーヒーのいれ方と接客を指導しています。

「施設の理事長である楠本浩子さんと幼なじみだった縁で始めたこと。彼女から指導の依頼をもらったその場で快諾しました。これまでお世話になった社会への恩返しになればと思って。新しい店での毎日は、15歳に戻った気分ですね」

接客の先生は健さん!?

「みんな、明るいのがいい。それに、真面目で覚えが早いんです」とスタッフを評する猪田さん。彼らを指導する中で、お礼の言い方やあいさつの仕方には、特にこだわったと言います。

「『イノダコーヒ』時代に常連客だった俳優の高倉健さんから、心を込めて言葉を発する大切さを学びました。健さんは、コーヒーを最後の一滴まで残さずに飲まれた後、いつも『ありがとう、おいしかった』っておっしゃったんですが、その言い方が、本当にしびれるんですよ。言葉には、言い方一つであんなにも感謝の気持ちを伝える力があるんだな、って」

開店当初は、「お店を手伝うのは80歳の誕生日まで」と考えていた猪田さんですが…。

「延長になる可能性は十分にある(笑)。お店を軌道に乗せるまで、やりきりたいですね」

(文・佐竹香苗 

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