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試写室・劇場から

遺体 明日への十日間

2月23日(土)からT・ジョイ京都で公開

©2013フジテレビジョン

どんなとき、どんな場合でも守られるべきは人の尊厳

年とともに1年のたつのがめっぽう早く感じられる。だが、一昨年は違った。あの3月11日以来、まるで時が止まったかのようだった。本作は、ジャーナリストの石井光太が書いたルポをもとに映画化されたもの。東日本大震災後の岩手県釜石市を舞台に、見る者の心を洗うような、しみじみとした余韻である。

大震災で混乱に陥った釜石では、廃校になった中学校の体育館が遺体安置所として使用されることになった。そこに、以前、葬祭関係の仕事をしていた相葉(西田敏行)が現れ、ボランティアとして詰めることになる。津波のせいで汚れ、命を失った多くの体が次々に運ばれてきて、市の職員も言葉を失うが…。

相葉の言動が、周囲に大きな変化を招き寄せる。扱いがぞんざいな人間には「あの方々は死体ではないですよ、ご遺体ですよ」と言い聞かせ、遺体には生きている人に話すように語りかける。やがて「この人たちを早く家族のもとに帰してあげねば」という気持ちが皆に広がっていくのだ。

つらいと感じる部分も多いだろう。だが、あの日々、その場所でそんな思いを抱きながら、尽力された方々がいたこと、生きていても亡くなっても守られるべき人の尊厳について、胸に深くとどめておきたいと思った。君塚良一監督。

(ライター 宮田彩未 

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