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試写室・劇場から

ホロヴィッツとの対話

3月31日(日)まで、シアターBRAVA!で公演中

三谷幸喜の最新作は
段田の怪演が見逃せない

神に選ばれし20世紀伝説のピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツ夫妻(段田安則・高泉淳子)が、ホロヴィッツの専属調律師フランツ・モア夫妻(渡辺謙・和久井映見)の家のディナーに招かれた夜。そこで交わされた対話の中から、芸術にかかわる人間の非凡な素顔、そのシリアスな背景、そして、あたたかな感動が浮かび上がる会話劇である。ならば、堅苦しい芸術論などが飛び交う、メッセージ性の強い舞台なのかと思いきや、そこは、くせ者“三谷幸喜”の作・演出。

天才ゆえの(?)数々の奇行を、段田が、それはそれは巧みに演じれば、渡辺がそれを、生真面目に不器用に受け止めるおかしさ。ホロヴィッツの妻・ワンダの、気位の高い強引さやかわいさに対し、フランツの妻・エリザベスも、清そな外見ながら、これがナカナカ…。

テンポのいい芝居運びの中の、段田の絶妙の間といい、ハッキリしたストーリー展開よりも、役者の魅力を表に出す手法といい、これはやっぱり三谷幸喜の世界である。

舞台上で、ホロヴィッツがピアノ演奏を披露することはないけれども、四人の対話の中から、どこか狂気を秘めた彼の名演奏と、それを陰で支え続けたフランツとの強い信頼関係が浮かび上がってくる。

(ライター あさかよしこ 

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