桜の下で待っている
彩瀬まる 実業之日本社・1512円
東北新幹線で〝ふるさと〟へ それぞれの家族にまつわる物語
本書は東北新幹線で「ふるさと」に向かう5人の、家族にまつわる短編集。美しい文章でつづられ切なくも優しい気持ちにさせてくれます。
僕自身は京都生まれの京都育ちなので、「実家」とは違う「故郷」に憧れを抱いていました。各章の冒頭で登場する車内販売員のさくらも帰る場所がなくてどこかに帰りたいと思っていた。車内販売で故郷から帰る人に接するうちに抱いた〝自分がどこかに帰るより、誰かに帰ってきてほしい〟という言葉がすっと心に舞い込んできました。
物語の中では僕の知らない東北の名所も紹介され、また東北新幹線で旅したくなりました。自分の心の中にしかない「ふるさと」を求めて。

ことばのはおと 中村仁さん
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