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江戸時代の土壁を再利用した「つちのいえ」が出現

美しい里山が広がる西京区大枝。この地域で、今、京都第二外環状道路(にそと)の建設が進められています。その工事に伴い取り壊された家の壁や土、地域の石や竹などを使って、同地区にある京都市立芸術大学の学内では「つちのいえ」を製作中。作り手の学生たちが奮闘中です。

「大枝地域には、江戸時代から“土塀がある美しい景色”がありました。工事のためにその土塀が取り壊されると聞き、何らかの形で残せないかと思ったのです」

そう語るのは、同大学で造形計画を指導している井上明彦さん。この先ずっと伝え続けるためには…と考え、生まれたアイデアが「家を作る」でした。

2009年、こうして、みんなが集える“楽しい場所”としての「つちのいえ」作りが井上さんを中心に、学生も交えて始まりました。

まずは敷地の開拓と、材料集めからスタート。といっても材料は全部“いただきもの”。地元の自然木や竹で柱を組み、壊された土塀の土を再利用して壁を塗りました。かやぶき屋根のカヤも、西山で刈ったり、職人からもらったものなのだそう。屋根の一部には、学内に捨てられていたキャンバスを再利用している箇所もあるのだとか。

「にそとの工事は、かなりのスピードで進んでいますが、こちらはすべて手仕事。時間がかかります」と井上さんは笑います。

芸大祭でお披露目!

取材に訪れた日に作業に参加していた学生に感想を聞くと、「筋肉痛になる日々です」というコメントも。このように、物作りが体にも影響を与えることから、“生きること”を意識するようにもなったのだそう。

また、「『つちのいえ』の材料は、自然の中や身近にあるものばかり。ですので、最近は日常生活で目にするものが家の材料に見えてきました(笑)。モノは無限に循環できるのだと思います」という声もありましたよ。

今後は地域住民にも開かれた場として、コンサートや作品展の会場として利用されます。まずは、11月3日(祝・土)~5日(月)の芸大祭でお披露目されるので、材料費ゼロ、すべての工程が手作業、大枝の自然資源が生まれ変わった「つちのいえ」を見学してみては。期間中は、実際に土壁を塗るワークショップなども開かれる予定です。

ブログではこれまでの詳しい工事の工程を知ることもできます。「つちのいえブログ」(http://plusap.exblog.jp)。

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