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山科・御陵の「栗原邸(旧鶴巻邸)」一般公開

地下鉄東西線「御陵」駅を下車し、山手へと歩くこと約10分。もう琵琶湖疎水に到着するという手前で、大きな門を構え、緑が茂る庭がある邸宅が目に入ります。ここが1929年に建設された「栗原邸(旧鶴巻邸)」。当時、最先端の建築技術で建てられたこちらの住宅が一般公開されます。築84年という歴史を感じに出かけませんか。

玄関ポーチ。コンクリートで作られた柱は、よく見ると細いラインが入っています。「これは、金づちでたたいた跡。質感を出すため、わざと粗っぽく仕上げているんです」(笠原さん)

大きな門を抜け、緑濃い木々の間に作られた石階段を上ると、そこが玄関。

─うわぁ、かっこいい。
記者は、思わず見とれてしまいました。

丸い2本の柱、半円形の玄関ポーチ、壁はコンクリートブロックがむき出しです。

「上を見てください。ライトがピラミッド形でしょう? この建物はこの空間に表されているように、定規やコンパスで描ける直線や正方形、円などの“幾何学”が意識的に組み合わされているんです」

そう話すのは、栗原邸保存研究会の会員で建築史を専門とする、京都工芸繊維大学大学院・助教の笠原一人さん。「コンクリートブロックがむき出しになった外壁の作り方は当時の最先端の工法なんですよ。室内の床や天井にもこの工法が採用されています」

「栗原邸(旧鶴巻邸)」は1929年、京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)校長・鶴巻鶴一さんの邸宅として建設された“モダニズム建築”です(戦前に所有者が変わり、栗原邸に)。モダニズム建築とは、装飾を極力排除し、機能性と合理性を追求した建物のこと。でも、笠原さんに室内を案内してもらっているうちに、デザインの面白さが目に入ってきました。

笠原一人さん。窓の外、建物に“ひさし”があるのが分かりますか?今では当たり前のように感じられますが、設計者が学んだヨーロッパのモダニズム建築にはひさしはありません。「雨や日差しが強い日本の風土に合わせ、作られたものなんです」

階段の手すり部分はまるで数珠のように円すい体が連なっているし、2階の応接室の形も玄関ポーチ同様に半円形でユニーク!

「そうなんです。1929年は、ヨーロッパの伝統的な様式建築からモダニズム建築への過渡期。そして、この住まいの設計者・本野精吾が留学先で学んだウィーン分離派やウィーン工房の様式。これらの影響を受けたと思われる装飾的なデザインが見られるのも特徴なんです」

こういった建築スタイルが評価され、モダニズム建築の保存に関する国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)Japan」から、すぐれた日本のモダニズム建築の1つに選定されているのだとか。

(左)1階玄関脇の応接室。染色の研究家であった鶴巻鶴一さんが手がけたふすま絵が飾られています。
(右)階段の手すりにも注目を。手すりと階段をつなぐ部分が、まるで数珠のよう! 細かい部分の遊び心を見つけるのも楽しみです

京都の近代建築にも目を向けて


こちらが玄関ポーチ上の2階応接室。テーブルやいす、クッションまで竣工(しゅんこう)当時のまま

実は一般公開は過去3回行われ、今回は5年ぶり。この間、2011年から13年にかけ、京都工芸繊維大学大学院の教育プログラムの一環で、学生も加わり修復作業が行われました。現在までに、屋上防水と室内3部屋の修復が完了しています。公開時は、修復がされていない部屋を見ることもできますが(一部立ち入り禁止)、その壁や天井ははげてボロボロ…。ここでも84年の歴史を感じることができます。

「京都というと江戸時代以前の古い建物に目がいきがちですが、近代の京都では、ヨーロッパに学んだ建築家が大学に勤めながら最新のデザインや理論を追求するなど、建築では東京よりも先進的な部分がありました。この一般公開で、京都にこれほどの価値のある近代建築物があることを知ってほしいと思っています」

一般公開は6月1日(土)・2日(日)午前10時~午後5時。入場料1000円(学生500円/資料代込み)。申し込み不要。車での来場不可。各自スリッパの持参を。会場は、京都市山科区御陵大岩17-2(地下鉄「御陵」駅2番出口から北へ、徒歩約10分)。問い合わせは、栗原邸保存研究会=kasahara@kit.ac.jp=へ。

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