ホーム > > 特集:社会・生活 > 使っていますか? 水道水

使っていますか? 水道水

この際、聞いてみました 素朴なギモン

読者から地元の水道水について、ギモンに思っていることを挙げてもらいました。その中から多かったものをいくつか聞いてみました。

最近、水道水がおいしくなったのでは?

(左から)京都府文化環境部の碇正登さん、池邉俊之さん。「府営水道水を飲んだ人にアンケートしたところ、224人中192人から『おいしい』との回答が。より安全でおいしい水が届けていけるよう取り組んでいます!」

水道水には、「味」「臭気」といった飲み心地に関する項目の検査が定められています。

さらに、「その日の原水の水質や気候などに合わせて、においを除去する活性炭、塩素などの量を調整。積み重ねてきた技術や経験を生かし、きめ細かく対応しています。琵琶湖の環境が改善したことも、要因の一つと思われます」と、京都市上下水道局の中嶋和重さん。

京都府文化環境部・池邉俊之さんは「宇治浄水場では、カビ臭などを除去するため、高度浄水処理施設を導入。より“きれいな水”になったことが、おいしさにつながっているように思います」そして、こんなアドバイスも。「においが気になるときは、やかんのふたをあけたまま、水道水を沸騰させればカルキ臭を取り除くことができますよ」

中嶋さんからは「10〜15度に冷やせばさらにおいしく飲むことができます。ただし、煮沸すると塩素が抜けてしまうため、早めに飲みきってくださいね」

災害や渇水などの影響が心配

府営水道水が入った「京の水」(右)、京都市の水道水を使った「疏水物語」。いずれも、災害用備蓄飲料水として活用

「府では3つの浄水場の送水管を接続することで、災害や事故などで1つの浄水場が機能停止となった場合でも、他の供給可能な浄水場からバックアップする体制を整えています。

また、異なる河川から取水している特徴を生かして、渇水や水質悪化の場合も、影響のない浄水場から応援することで、安定的に水道水を供給します」(碇さん)

「京都市では、地震など災害時の飲料水確保を目的に、応急給水槽の設置や給水車などを市内各所に配備。府とも連携して、京都府営水道との緊急連絡管の設置を行い、緊急時に備えています」(中嶋さん)

そのまま飲むのは抵抗が…

「安心、安全、おいしい京都市の水道水でしっかり水分補給をして、夏を元気に乗り切ってください!」と京都市上下水道局・中嶋和重さん

水道水の水質は、厚生労働省が定める要件を満たすことが義務づけられています。この要件を『水質基準』といい、健康を害するおそれがあったり、生活上の支障を生じるおそれのある化学物質や有機物など50項目について基準値が設定されています。 「京都府では、さらに水質管理上必要な項目や放射性物質などについてもきめ細やかな検査を行っています」(碇さん)

一方、京都市も「放射性物質の検出機器などを用い、独自の検査もしています」(中嶋さん)とか。

府・市とも原水などの水質検査や、水源地の環境を監視。これらを定期的・不定期で実施し、その状況に応じた浄水処理や塩素処理を行っているとのことです。

水道水の安全性は、日々の厳しいチェックで管理されているんですね。

水道水を料理に上手に活用したい!

「懐石・宿 近又」総料理長・鵜飼治二さん。「水は料理の要。水を使う私たち自身も、水源地を汚さないよう心がけていかないと」

「もともと京都の水は、硬度(カルシウムやマグネシウムの含有度)の低い“軟水”。水道水も軟水で、コンブだしをとるのに適しているんですよ」とは、「懐石・宿 近又」の総料理長・鵜飼治二さん。

  軟水はコンブのうま味成分、グルタミン酸を引き出しやすいのだそう。

同店では、「わずかなにおいを消すために一度活性炭を通してから料理に使っている」そうですが、 ほかにも、「軟水でご飯を炊くとふっくらした炊きあがりに。緑茶やコーヒー、ウイスキーの水割りもおいしくしてくれますよ」。

一方、関東は中硬水に近い軟水のため、コンブの味が出にくく、カツオだしが料理の主役になったとか。また、欧米に多い“硬水”は、肉の臭みを消したり、柔らかくする特性があるそうです。

「水を上手に活用するには、イメージに惑わされず、自分の舌で味わった感覚で見極めることも大切。

水は地域の料理文化だけではなく、自然環境やエネルギー問題などにも密接に関わっています。そういう話題を語り合いながら食べるのも、料理の味わいを豊かにするポイントですよ」

水道水が私たちのところに届くまで

「水道水」をつくる仕組み

水道水は、河川、湖、地下水といった自然界にある水からつくられていて、水道水として取水される水は「原水」と呼ばれています。
一般的に、原水は浄水場に運ばれ、不純物、濁り、匂いなどを除去するため、沈でん、ろ過などの方法を用いて浄水処理されます。浄水された水は、塩素剤などで消毒された後、水質検査を実施。安全性が確認された水は、給水区域内の各所に設置された「配水池」に貯水され、そこから配水管(水道管)を通して、各家庭に運ばれます。
※地域によって、取水から給水までの工程や、浄水処理の方法などは異なる場合があります。

琵琶湖から京都市内へ

蹴上浄水場は、日本最初の急速ろ過式の浄水場として明治45年4月に給水開始。ツツジの名所としてもおなじみ

【京都市上下水道】

昨年、創設100周年を迎えた京都市の水道事業。現在、京都市上下水道は主に琵琶湖の水を原水としています。琵琶湖疏水によって運ばれた、この原水は、蹴上・松ケ崎・新山科の3つの浄水場を経て京都市内に給水。
「京都市内の約4割の地域では、地形の高低差を利用して給水する『自然流下』という方法を用いています。ポンプなどの動力を使わないので、電力削減といった環境負荷の抑制にもつながるんですよ」(京都市上下水道局・中嶋和重さん)
※水道の普及していない山間部などでは、「地域水道(簡易水道)」という小規模の給水方法が用いられています

原水 浄水場 給水地域(※2)
琵琶湖(※1) 蹴上浄水場 主に京都市東部
松ケ崎浄水場 主に京都市北部
新山科浄水場 主に京都市西南部

※1:ごく一部を宇治川から取水 ※2:山間部などの一部は、地域水道(簡易水道)にて給水

3つの河川から府南部の10市町へ

嵐山の渡月橋から、1.5キロ上流にある桂川(保津川)の取水口。景観に配慮し、目立たないよう設置しているとのこと

【京都府営水道】

京都府営水道は、宇治川、木津川、桂川を原水とし、宇治・木津・乙訓の浄水場を経て、府南部の10市町に供給しています。
京都府文化環境部・碇正登さんによると「府の南部地域は昭和30年代に入って人口が急増し、各市町の自己水源(地下水など)だけでは、水道水の安定供給が困難になってきました。そこで、府が水道水をまとめてつくり、供給することになったのです」
地域によっては、京都府営水道がつくる「府営水」のほか、市町が確保した「自己水」のみを使ったり、ブレンドしたりして給水しているところもあるようです。

原水 浄水場 給水地域
宇治川(天ケ瀬ダム) 宇治浄水場 宇治市、城陽市、八幡市、久御山町、
京田辺市、木津川市(旧木津町域)、
精華町、向日市、長岡京市、大山崎町
木津川 木津浄水場
桂川(保津川) 乙訓浄水場

このページのトップへ