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京都民話巡りの夏

山城

故郷を思うせつなさが仏さまの笑顔に溶け込んで

(右)2mを超える大きな岩に彫られた「笑い仏」。そのそばには、首まで土に埋まった状態の「眠り仏」(左)の姿も見られます

地域の伝承を編さんする「宇治民話の会」。「民話の舞台を訪ねると、物語の背景にあるものを感じられます」という代表・阪田憲子さんの話を受け、民話「当尾(とおの)の野仏」の舞台である、木津川市加茂町の当尾を訪ねました。

当尾にある2つの寺院、浄瑠璃寺と岩船寺(がんせんじ)を結ぶ道を、道標に従い、歩きます。大小さまざまな石仏の中でも特に目立つ「笑い仏」は、中央の仏さまの表情がやや悲しげ。傾いているからそう見えるのでしょうか。いえいえ、「隠れ里」の雰囲気をたたえ、すがすがしさと静けさが同居したこの地にいると、どこか“寂しい”という感情が刺激されるよう。伊末吉が感じた望郷の思いが仏さまの笑みに溶け込んだのでしょう。

【DATA】
JR・近鉄「奈良」駅から「浄瑠璃寺行」の奈良交通急行バスに乗り、「浄瑠璃寺前」停で下車。またはJR大和路線「加茂」駅から奈良交通「加茂山の家行」のバスに乗り、「浄瑠璃寺前」停で下車。そこから「石仏めぐり」の看板に従って散策を
「宇治民話の会」の皆さん
1983年より、児童文学作家の吉橋通夫(みちお)さんの指導のもと民話の採集を実施

地元の人、遠方の人、みんなを癒やす祈りの水

乙訓

(左)地元では名水として親しまれている独鈷水。願いを込めて目を洗う人、持参したペットボトルに水をくむ人などがいました
(下)楊谷寺。山の中にたたずむ、美しいお寺です

乙訓地方に伝わる心温まる話を教えてくれたのは、「長岡京市ふるさとガイドの会」の2人。子を思う母ザルの姿がいじらしい「柳谷観音 楊谷寺(ようこくじ)の独鈷水(おこうずい)」の伝説です。

現在も、独鈷水は楊谷寺で大切に管理されており、お堂の前で手を合わせてから水をいただく地元の人の姿も。

「『目の病気を治したい』と遠方から来られる方も目立ちます。真剣にお祈りされている姿に、どの方の願いも観音様にしっかり届けなければ、と思っています」と副住職の日下俊英さん。

【DATA】
長岡京市浄土谷2、TEL:075(956)0017。拝観時間/午前9時~午後5時。拝観無料。阪急「西山天王山」駅から徒歩1時間、またはタクシーで7分
「長岡京市ふるさとガイドの会」
別所昭さん(左)、松井徳雄さん
長岡京市の観光案内のほか、乙訓地方に伝わる言い伝えを紙芝居にして学校などで披露するといった活動も

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