春の便り、届きましたか

夜空からのメッセージはふたご星から

京都産業大学・神山天文台の主任研究員 中道晶香さん

【上】冬の天文台(後方)の内部は、外気温と変わらない寒さ。「過ごしやすくなると、春のおかげとうれしくなります」
【下】画像提供・(株)アストロアーツ

京都産業大学・神山天文台で主任研究員を務める中道晶香(あきか)さんは、子どものころに見た天の川がきっかけで天文学の世界へ。中道さんにとっての、春を知らせる星空からのメッセージは“ふたご座”の位置だそう。

「ふたご座は、カストルとポルックスという双子の兄弟が寄り添っている姿を表しています。夜空でふたご座を探す目印になるのが、ふたご星とも呼ばれる、並んで輝く2つの明るい星〝カストル〟と〝ポルックス〟。宵の口、冬の間は夜空の低い位置にいますが、この星が高い位置に見えだすと春だなと思いますね」

時期は3月初旬、夜の9時ごろに真上を見上げると、ひときわ明るいカストルとポルックスの姿が見えるそう。

「カストルは、肉眼で見ると1個の星ですが、望遠鏡をのぞくと2個の星からなる連星、さらに精密に観測すると6重連星ということが分かります。連星とは、お互いの重力で引っ張り合いながら回る恒星のことなんですよ」

肉眼で連星のそれぞれの星を見分けるのは無理ですが、カストルとポルックスは4月ごろまで見つけやすいそう。

柿渋染めを発色させる日差しを感じて春本番

屋根の上に、柿渋染めの作品を干す青木さん。「浸して干しての作業を20回繰り返しています。ぼくの好みですが、革のような質感が出たら完成」

「手染メ屋」店主・染色家 青木正明さん

樹木の皮や芯材、草の根といった天然染料を煮出して布などを染める草木染め。染色に使う大きな鍋を洗うとき、水が痛く感じられなくなると春の始まりを思うという染色家の青木正明さんは、店舗兼工房「手染メ屋」の店主です。

ですが、春本番となると、「柿渋染めが1カ月ぐらいで仕上がるようになるころ。4月半ばの少し汗ばむくらいの陽気のころです」とのこと。

柿渋染めでは、渋柿を熟成させた染料の希釈液に布を浸し、太陽の日差しにあてる作業を何度も繰り返します。

「染料に含まれるタンニンが、日光で酸化し茶色に変化。日差しが弱い冬場は酸化が進まず、20回以上も作業を繰り返し、2カ月以上かかります。それが、日差しが強くなると半分の作業と時間で完了するんです」。使う染料の濃度も、冬場より薄くするのだとか。太陽の威力は大きい!

工房では、この春、久しぶりにサクラ染めに挑戦する予定とか。今年の春の楽しみが一つ増えたようです。

京都にゆかりあるツバキを目にすると…

キャビックのタクシードライバー 谷本光雄さん

「お彼岸のころの、お釈迦(しゃか)様のご縁を心で感じられる春が好きです。ここ清凉寺のご本尊はお釈迦様。3月15日の『お松明式』は、お釈迦様が荼毘(だび)に付される様子を再現しています」 ※清凉寺境内は車乗り入れ不可。写真は特別な許可のもとに撮影

「京都は、景色や行事などいろいろなところで春を感じさせてくれる街です」と話すのは、キャビックのタクシードライバー・谷本光雄さん。

タクシー乗車歴約20年の谷本さんは、寺社仏閣好きが高じて同社の観光タクシー担当者の教育係も担う観光タクシーのベテランです。「日差しがポカポカしてくると、寒さから解き放たれた観光客の皆さんはウキウキしていらっしゃいますよ」

春の観光客に人気なのがサクラ。ですが、「平安時代から江戸中期ごろまで、京都に春を告げていた花はツバキだったとのことなんです」と谷本さん。

「ツバキはもともと、位の高い人だけがめでていた花ですが、いつしか京都の街の人たちも楽しめるようになったそうです。そんな京都とツバキのゆかりを聞いてから、ツバキの花を見ると『今年も春が巡ってきた』と、強く意識するようになりました。ツバキの見頃は、サクラの見頃とほぼ同じ時期。皆さんにも、京都とゆかりの深いツバキに春を感じてもらえるとうれしいです」

読者に届く「春の便り」はコレ!

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