活躍する女性たちに聞きました

産地と食卓をつなぐ〝せり人〟として、朝6時にせり台に立っています

京都青果合同 季節・つま物部係長 東垣直美さん

京都青果合同 季節・つま物部係長 東垣直美さん

せりを采配する東垣直美さん。堂々としていて、〝かっこいい〟姿です。「現場のみなさんに見守られ、鍛えてもらいました。これから私自身が次の世代を育てる存在になっていかないと」

朝6時の京都市中央卸売市場。第一市場のせり台に、マイクを持って立つのは「京都青果合同」唯一の女性せり人、東垣直美さんです。その正面には買い手である仲卸業者がずらりと並び、東垣さんに注目。はりつめた雰囲気の中で、やりとりされる言葉や動作は記者にはさっぱり…。

「私が野菜の品名、等級、数量などを伝え、仲卸業者さんは買い値を“手やり”という指の動きで示します。その中から高い値を付けたところに売っているんです。テンポよくかけ声を出し、正確に手やりを読み取ることで、進行がスムーズになり安定した値段につながります」と東垣さん。

せり人を志したのは、先輩の姿に「かっこいい!」と憧れたのがきっかけとのこと。
「2008年に資格を取ったらすぐ、特に練習もしないまま『じゃ、立って』って。あのときは、崖から突き落とされたように感じました」

そんな東垣さんのせり人初日、仲卸業のみなさんは拍手で迎えてくれたそう。
「私の練習のためにと難しい手やりを出してくださったりも。仲間の一員として、みんなで育てようという温かい気持ちが伝わってきました。そんなふうに優しく迎えてもらいましたが、普段は女性扱いされていません(笑)」

せりを終えた後は、生産者に当日の販売状況や翌日の発注内容を連絡。仲卸業者のニーズを伝える一方、生産者が作る野菜や新商材・生産地を開拓して仲卸業者に紹介し、両者をつなぐ役割も担っています。

目標は、産地や仲卸はもちろん、その先にいる消費者にも喜んでもらうことです。

働く女性・働きたい女性のための事業に取り組むワーキングマザーたち

Megami代表取締役社長・小島雅子さん、取締役副社長・坂本景依子さん

Megami代表取締役社長・小島雅子さん、取締役副社長・坂本景依子さん

「今後も、働く女性を応援するための事業を展開していく予定です」(左/小島雅子さん)。「〝働く〟ということに、一歩だけ頑張って踏み出してもらったら、みんなでドンと背中を押します」(坂本景依子さん)

先月1日、ワーキングマザーらが設立した「Megami」のオフィス。「できたて、ほやほやです」と、笑顔で迎えてくれたのは代表取締役社長の小島雅子さんと、取締役副社長・坂本景依子さん。

同社は、社員や起業家、子育て中の人などを対象に、働く女性や働きたい女性をサポートする事業に取り組んでいます。

「以前、勤めていた会社には育児中の在宅勤務制度はあったものの、ママ友もおらず、親は遠方。育児の不安や悩みを一人で抱え込み、とにかく孤独でした」(小島さん)

「自宅で仕事をしていると、締め切り前に限って子どもが遊びたがったり、ぐずったり。つい怒ってしまい『何のために仕事をしてるんだろう』と。そんなとき、誰かに『ちょっと見てて』と言えれば、どれだけ心強いか」(坂本さん)

2人はそれぞれ、子育てをしながら働くしんどさ、企業の制度が現場の女性たちを十分にフォローできていないことを実感してきたそう。

「ここにはシェアオフィスもあり、子ども連れでの利用もOK。自宅で仕事をしている人の、もうひとつの仕事場として活用してもらえれば」「働くお母さん同士がつながって、仕事や育児を学び合い、助け合える空間にしていきたいですね」

育休中や産休中の会社員などのキャリアアップをサポートするセミナーも開催。一方、企業側には女性社員の福利厚生の一環としての同社オフィスの活用や、社員に結婚や妊娠といったライフプランをヒアリングし、その人に合った勤務システムなどを提案しています。

「女性活躍推進法は大きなチャンスでもありますが、どう向き合っていくか女性だけではなく企業も揺れている。私たちは、双方にメリットをもたらす事業を通して、女性が真に活躍できる社会を目指します」(小島さん)

女性研究職の第一期として、後輩が働きやすい環境づくりも

GSユアサ研究開発センター 主査 中川裕江さん

Megami代表取締役社長・小島雅子さん、取締役副社長・坂本景依子さん

「入社当時、女性は男性の3倍働いて一人前と言われたこともあったんですが、私には絶対無理(笑)。そのかわり、自分ができると思ったことはとことん精いっぱいやってきました」と中川裕江さん

電池メーカー「GSユアサ」の研究開発センター主査・中川裕江さんは、約20年にわたってリチウムイオン電池の基礎研究を担当。リチウムイオン電池とは充電可能な二次電池の一種。スマートフォンやノートパソコン、電気自動車など、私たちの身近で使われています。その研究成果により、昨年は電気化学会の「女性躍進賞」(※3)を授賞しました。

中川さんは1990年に同社初の女性研究職に採用されました。「研究部門の女性用制服を決めるところからのスタートでした」

そんな状況を「むしろチャンス」ととらえていたと言う中川さん。「『女性にはこういう仕事』という前例もなかったので、好きなことをやりたいところまでやらせてもらえるなと」

同時に、女性研究職の第一期として「女性には『家庭を重視したい』『仕事を優先したい』など、さまざまな事情や考え方がある。後輩たちが仕事をやりやすい環境を、自分がつくっていかないと」とも思ったそうです。

現在も続く研究テーマに出合ったのは入社6年後のこと。
「専門外の分野だったのでイチから勉強しました。悪戦苦闘の連続でしたが、すぐに私にとって魅力とやりがいのあるテーマになっていきました」

研究部門が移転することになったときも、そのテーマを続けるために転勤を自ら決断。情熱は今も冷めず「世の中にない電池、今までにない用途を生み出したい。まるで、雲をつかむような話ですが」と笑顔で話します。

「大切にしているのは、自分で自分のリミットを決めないこと。既成概念や経験にとらわれて『どうせだめだろう』とあきらめず、『必ずできる』と思える力がないと技術も自分も前に進めない。そこでの失敗は無駄でも回り道でもなく、前進や成長のための学びにつながるんです」

※3 独創性の高い研究または新しい技術開発を進め、今後の活躍が期待される女性研究者・技術者の中から選考

このページのトップへ