ホーム > > 特集:食 > あらためて考えたい〝食べる〟こと

あらためて考えたい〝食べる〟こと

教えてくれた人
京都女子大学家政学部
食物栄養学科

教授 今井佐恵子さん

毎日するもの、それが食事。今回は、身近な〝食べる〟ことにまつわる読者の認識を、専門家に解説してもらいました。食欲の秋を前に、〝食べる〟ことについて考えてみませんか。

体内のこと

辛い物を食べると体が温まるというのは本当?(はな・47歳)
本当血管の拡張とアドレナリンで体温が上昇

「唐辛子などの辛い食べ物には、血管を拡張させる働きがあります」と、京都女子大学家政学部食物栄養学科教授の今井佐恵子さん。

「血の巡りが良くなるので確かに体温は上がります。ですが、発汗作用によって出た汗でいったんは体温が戻るんです。それでも、食べ続けていると暑さを感じますね。原因は脳内物質のアドレナリン。今度はアドレナリンによって脳が興奮状態になり、体が温まります」

その体温上昇は、持続するものではないそう。

「体が温まるのは一時的な効果です。続いたとしても、食事が終わった直後まででしょう。辛い物は新陳代謝を良くし、消化も促進させてくれます。夏の疲れにも効きますよ」

ただし、胃の粘膜を刺激してしまうので、食べすぎには注意が必要とのことです。

食事量は腹八分目に抑えています(ちょこっとママさん・54歳)
グッド老化・生活習慣病の予防に効果あり

そもそも腹八分目とは。

「もうちょっと食べたいと感じるくらいが目安です。食事量を抑えるコツは、よくかんでゆっくり食べること。量は同じでも、満腹感が変わってきます」

腹八分目は、ダイエットになるほかにも、メリットがあるとか。

「体内の酸素が細胞へ与えるダメージを酸化ストレスといいます。腹八分目を守ってカロリー摂取量を適度に抑えると、酸化ストレスによる老化や生活習慣病のリスクが少なくなります」

ですが、控えようと思ってもつい食べてしまうときがあるもの。

「スイーツ好きにとっては、〝デザートは別腹〟ですよね。別腹はオレキシンというホルモンが原因。おいしそうなものがあると脳が認識したときに分泌されます。オレキシンは胃の動きを活発化させ、新たなスペースをつくりだします。これが別腹の正体です」

食後は好きな食べ物から目をそらす、強~い心が大事なのかも。

野菜から食べると、血糖値の急上昇が防げると聞きました(ゆず・56歳)
その通り食物繊維が糖の吸収を穏やかに

読者のゆずさんのように、「野菜から食べるとやせる」という話を聞いたことがある人もいるのでは。今井さんも「食べる順番は、血糖値の上昇に大きく関わってきます」と話します。

「まずは食物繊維の多い野菜や海藻、コンニャクを。次は、タンパク質を含む肉、魚、大豆製品。ご飯やイモ類などの炭水化物は最後に食べるという順番がベストです。食物繊維は糖の吸収を穏やかにするので、急激な血糖値の上昇を防ぎます」

反対に炭水化物から食べると、血糖値を下げるインスリンというホルモンが大量に分泌されるといいます。

「インスリンは血液中の糖類を脂肪に変えて血糖値を下げようとします。インスリンが増えると多くの糖が脂肪となり、肥満につながるのです」

読者からは、食前にナッツを食べることでも、血糖値の上昇は抑えられるとの情報が。

「ナッツも食物繊維が豊富に含まれています。ただし、油でローストされていたり、塩味が付いているものは食欲を増進させてしまいます。無塩でノンオイルのタイプを選ぶのがおすすめです」

このページのトップへ