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市民の力が研究に役立っています

生態系や環境に関わる専門家の研究に、私たちの力が役立つんです! 知識はなくても問題ナシ。自分ができる範囲で協力すればOK。今、市民を巻き込んだ、そんな動きが注目されています。

調査1梅小路公園のビオトープには、どのような生き物が生育する?

リストを片手に目当ての植物をチェック

【左】植物を撮影する、中学3年生の冨川遼大(はると)さん(左)。「昆虫が好きで、森に興味があります。もっと自然について詳しくなりたいと思い、調査に参加しました」 【右上】希少植物のウチワドコロ。葉の形がうちわに似ていることから名付けられたとか 【右下】ヒメヨツバムグラも発見。季節ごとに見つかる植物が変わるのも、調査の面白さです

梅小路公園(下京区)にある「いのちの森」でしゃがみこむ人々。足元の植物を熱心に観察し、「ウチワドコロが生えてる!」「ヒメヨツバムグラもありますよ」と口々に話しています。

これは、植物学の研究者などが所属する「京都ビオトープ研究会」による観察会の1シーンです。

1996年に誕生した「いのちの森」は、生き物の生息空間の再生を目指し、人工的に作られた〝ビオトープ〟と呼ばれる場所。もともとは、草も木も生えていなかったのだとか。

「ビオトープは作った後のモニタリングが重要。生き物がどのように生まれ、育っていくのかなどを『いのちの森』ができた当初から調べています」とは、同会代表で近畿大学農学部・非常勤講師の田端敬三さん。約3時間のモニタリング調査は植物、野鳥といった分野ごとに月1回実施。この調査に市民が参加しています。取材日は植物が対象でした。

調査の際は、まず植物の名前が書かれたリストが一人一人に配布されます。リストを見ながら、その植物が生えているかをチェック。とはいえ、名前だけ書かれていても植物に詳しい人でなければ分からないのでは?

「会のメンバーや常連の参加者に教えてもらいながら探すので、初心者でも大丈夫。だんだん植物に詳しくなっていきますよ」

花が咲いているか、実がなっているかも確認。名前が分からない植物は、メンバーに質問をすれば教えてもらえるそう。リストに書かれていない場合は追加し、今後観察していきます。

この調査に、約20年前から参加しているのは北川ちえこさん。「協力する人が多ければ多いほど、確認できる植物も増えます。研究に役立っていると思うと、やりがいがありますね」

中西有美さんは今年で4年目。「植物の成長の様子を観察できるのが楽しいです」と話します。

調査がスタートしてから22年。これまでに草花は407種、木は189種が確認されています。このほかの未発見の植物を探すのも、楽しみの一つですね。

参加は自由。詳細は、梅小路公園を管理する京都市都市緑化協会=TEL:075(561)1350=へ。


「『いのちの森』が多くの生き物が住む豊かな場所になればと思います」と話す田端さん(右)と、「京都ビオトープ研究会」に所属する名城大学農学部准教授の橋本啓史さん

市民調査の生かされ方

調査結果は次年度の5月ごろ報告書として発表。同会のホームページ(http://inochinomori.sakura.ne.jp/)でも公開されます。データを基に、同会メンバーの研究者が論文を執筆することも。観察結果を踏まえて、「いのちの森」が生き物が生息しやすい場所となるよう、除草や植栽方法などを同会が考察し、「京都市都市緑化協会」の管理方針に反映。

調査2災害について記録された古文書の内容は?

サイトにアクセスし、昔の文字を活字に

【左】古地震研究会のメンバーが集まり、実際の古文書を使ってくずし字を翻刻中。「みんなで翻刻」では、誰でもこの作業をインターネット上で行えます 【右上】自宅で翻刻に挑戦するTKさん。「これは〝地震〟と書いてありますね」と、活字を打ち込んでいきます 【右下】パソコンの作業画面の例。右側に表示される古文書を見ながら、左側に活字を入力します

地震や大雨といった災害。いつ発生するか、被害が出やすい場所はどこかが分かれば、備えることができますね。

将来の災害軽減を目指して地震などの歴史を研究する、京都大学の古地震研究会。研究資料となるのが、災害について記された古文書です。

書かれている文字は、普段目にしている文字とは違う〝くずし字〟。

「史料をスムーズに読み解くため、メンバーでくずし字を活字化する〝翻刻(ほんこく)〟という作業を続けてきました」とは、同会に所属する京都大学防災研究所付属地震予知研究センターの大邑(おおむら)潤三さん。

「これまでに翻刻を終えたものはごく一部。研究者だけで作業をするのでは、膨大な時間がかかってしまいます」

そこで、同会が昨年から始めたのが「みんなで翻刻」プロジェクト。東京大学地震研究所収蔵の災害関連の古文書をインターネットサイト(https://honkoku.org/)に公開し、誰でも翻刻に参加できるようにしたのです。

サイトでは、まず作業する史料を選択。画面右側に古文書の画像が表示され、左側のスペースに活字を打ち込む仕組みです。

「活字とはかなり形が違うので難しく感じるかもしれませんが、くずし字を学べるページもあります。見慣れると何の文字なのか分かるようになりますよ」

翻刻に参加している1人がTKさん。「1行を活字にするのに、2時間以上かかったことも。分からなかった箇所を伏せ字にしておくと、ほかの人が埋めてくれる場合もあります。災害研究につながる、意義のある活動だと感じます」

今後もサイトで公開する古文書を増やしていく予定。

「活字化された史料を基に、災害の歴史を調べていきます」(大邑さん)

問い合わせは古地震研究会==へ。


市民調査の生かされ方

市民が活字に直した古文書の文章をデータ化。文字検索が可能になり、研究資料としての利便性がアップ。史料の記録を読み解き、大地震が起こった場合に被害が出やすい地域などを明らかにしていきます。

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