今年の災害体験を、防災意識に変えるために

地震のとき

ベランダの窓、玄関の扉を開けて逃げ道の確保(MH・54歳)

揺れたとき、動くことができなかった人、とっさに机の下に隠れた人、2階に逃げる人と読者の対応はさまざまでした。

前出の田中さんは、「落下物から身を守ることは大切ですが、大きな揺れの際、机の下に隠れるという避難法は阪神・淡路大震災以降、見直されつつあります。建物倒壊の危険性が高いためです。クッションなどで頭を守って外に逃げた方が良いといわれています。ですので、MHさんのように外への逃げ道を確保することは重要です」

ただ、「立地や家の中の状況によって危険度は異なるので、冷静に判断してください」(田中さん)。

さらに大きな地震がくると断水するかもしれないと思い、お風呂に水をためて備えました(MM・26歳)

「水道水は塩素処理がされているので、浴槽に溜めた水であっても季節によっては1週間ほどは清潔さを保てます。飲み水としての使用はあまりおすすめできませんが」と田中さん。

では、飲み水を確保するにはどうすればいいのでしょうか。

「きれいに洗ったペットボトルに、飲み口ぎりぎりまで水を入れてください。空気が入らないようにすることで、空気の酸化による劣化が防げます。こうすると、冷蔵庫や涼しくて暗い場所であれば、1カ月ほど保存可能。その期間が過ぎたら、新しく入れ替えて」

水道が復旧した後の対策についても教えてもらいました。

「復旧直後は、濁った水が出ることもあります。そんなときのために、空のペットボトルを非常時用の〝ろ過装置〟として利用する方法があります」

まずは底を切り落とし、キャップを外して上下をさかさまに。中に網の目が細かいガーゼやスポンジをボトルの半分くらいまで詰めれば完成。水は上からゆっくりと流しましょう。

豪雨のとき

窓のレールから雨が吹き込んできたので、すき間ができないよう防水テープをはって対応しました(WH・63歳)

「防水テープで、ある程度は雨の浸入を防げます。また、バスタオルやシーツなど大きめの布でも対応できますね。雨で濡れた室内を拭いた後、そのまま使うといいでしょう」

浸水が止まらないほどの豪雨の場合は要注意。

「平成30年7月豪雨で甚大な被害を受けたのが岡山県倉敷市真備町。屋内の浸水によって多くの犠牲者が出ました。状況をみて、2階や外への避難を考えてください」

扉の外に水が30〜40cm以上たまると水圧で扉が開かなくなるということなので、その点にも注意が必要です。

知っておきたい災害時の対応
「あのとき、どうすれば良かったんだろう」。非日常の状況では、普段とは異なる行動が求められます。読者も災害時、迷ったり、困ったりしたことが多くあったよう。専門家からのアドバイスは─。
Q
避難を呼びかける情報が出ても、乳幼児がいると避難所に行った方がいいのか判断が難しい(IK・35歳)
A
「水害などにより避難の必要が生じたときには、お住まいの地域の市町村が避難情報を発令し、緊急速報メールなどでお伝えします」とは、京都府府民生活部 災害対策課 災害対策担当の齋藤裕二さんと中井航平さんです。

「子ども連れの方は避難に時間を要することもあるので、早め早めの行動を」。京都府では避難所の中に乳幼児や高齢者などに配慮したコーナーを設置するよう市町村に呼びかけているそう。

ですが、IKさんのように判断に迷った場合はどうすればいいのでしょう。

「確かに、夜間に大雨が降っている場合などは、外に出るよりも、例えば2階に〝垂直避難〟する方が安全なことも。まずはどのような状況になればどのような危険があり、その際どのように行動したら良いのか考えることが重要です」

京都府が公開している「マルチハザード情報提供システム」により浸水想定区域などの災害情報が分かり、起こりうる危険が確認できます。

「こういった情報を参考にしながら、『自らの命は自らが守る』という意識を持ち、行動しましょう」
Q
復旧後に漏電の恐れがあるので、停電時、プラグはコンセントから抜くべきと聞いたことがあります。暗くて大変でも、抜いた方がいいのでしょうか(UA・32歳)
A
「阪神・淡路大震災では、多くの通電火災が報告されました。復旧後に電気系統に負荷がかかり、火花が引火するなどして火災が発生します」と防災士の田中さん。

「ブレーカーが落ちたときは、消費電力が大きいものから電源を落としてプラグを抜いてください。例えば冷蔵庫やトイレの便器などです」

暗闇の中での作業は、UAさんが言うように難しそう。懐中電灯を1室に一つ以上置いておき、すぐに手に取れるようにするのがいいかもしれませんね。

「もし、懐中電灯の明かりだけでは足りないと思ったら、こんな方法を試してみては」。田中さんが教えてくれた、懐中電灯の明かりをアップさせる二つの方法は下のイラストをチェックしてみて。
懐中電灯にレジ袋をかぶせます。ちょうちんのように光が広がります
懐中電灯の上に水の入ったペットボトルを。光が反射してより明るくなります
Q
子どもが地震を怖がって、揺れが収まってからも隠れた台の下から出て来ることができず。安心させてあげたいけれど…(YM・32歳)
A
子どもの精神面のケアに詳しい京都光華女子大学の健康科学部心理学科教授の臨床心理士・徳田仁子さんによると、「ぎゅっと抱きしめたり手をつないであげてください」とのこと。

「大人も余裕がなく大変だと思いますが、そのようなときこそ触れ合って。一緒にいて安心させてあげることが大切です。手で温めながらのマッサージや深呼吸も落ち着かせるために効果的です」

災害直後だけではなく、しばらくは子どもの様子を気に掛けることが必要だとか。

「被災後1カ月程度は、赤ちゃん返りをしたり、怖い夢を見ることで興奮状態になる子も。不安を感じた際の当然の行動なので受け止めてあげて。1カ月を過ぎても続くようなら、ストレス障害に対応している小児科などへの相談も考えてください。子どもが話をしたがるときは聞いてあげて。無理に内容をまとめず、じっくりと耳を傾けてあげることで落ち着く子もいますよ」
京都光華女子大学
健康科学部 心理学科教授
徳田仁子さん
子どもたちが災害を乗り切れるよう、心理学を利用した減災教育活動「光華こころのキャラバン隊」も行っています

防災は備えが大切です。いつ災害が起きても冷静な判断、行動ができるように、体験したことを今後の防災に生かしていきたいですね。

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