とれない疲れ何とかしたい!

「睡眠」で、脳と肉体の回復を

1面で紹介したように、「疲れ」とかかわる自律神経。活動の源になる交感神経と、睡眠やリラックスといった休養をつかさどる副交感神経の2種類があります。

「日中は交感神経が優位で活動的になります。対して、夜間は、副交感神経が優位になり休養する状態に。交感神経と副交感神経が上手にバトンタッチすることで、心身のバランスが保たれています」

自律神経に負荷がかかると、交感神経と副交感神経のバランスがくずれてしまいます。つまり、「疲れ」を感じているときは、自律神経が乱れているということ。

そこで、回復のための休養をとって自律神経の乱れを整え、オーバーヒートした脳を正常な状態に戻すことが必要なのですが、「それができるのは睡眠だけです」と森下さん。

睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があるのを聞いたことがある人は多いのでは。「レム睡眠」というのは、眠っていても眼球が動いていて眠りの浅い状態。一方の「ノンレム睡眠」は、眼球が動かずぐっすりと寝ている状態です。

眠りに入るとまず深い眠りのノンレム睡眠になり、次に浅い眠りのレム睡眠へ。およそ90分間隔でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しているといわれています。

「ノンレム睡眠の間は脳が休養し、体は起きている状態になり寝返りをうったりします。レム睡眠に切り替わると、脳は夢を見るなど起きている状態ですが体は脱力していて筋肉が休養を取っています。

このノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルを4回繰り返すことで、休養が取れて心身は回復します。回復に効果的な睡眠時間としては、6時間程度がおすすめです」

睡眠時間の長さをはじめ、生活スタイルを変えることはなかなか難しいかもしれません。

しかし、「『疲れ』を改善しておかないと、昼間の活動に支障をきたすようにもなります。なるべく決まった時間に布団に入り、ノンレム睡眠とレム睡眠を意識した睡眠時間の確保。そして、起床時間をはじめとした規則正しい生活リズムを、まずは3日間だけでも続けてみてください。それができたら1週間。さらに2週間と期間を延長。3カ月続けられれば、かなり『疲れ』は改善されているはずですよ」。

よい睡眠環境は自分でつくれる

萩原啓さん

立命館大学情報理工学部特別任用教授・名誉教授。医学博士。メーカー勤務時代に住環境と健康器具にかかわる研究開発に携わり、大学へ。「昼間の活動状態はコントロールできるので、メリハリのある生活を送るように心がけています」

「疲れ」の回復には、よい睡眠が必要。ということで、快適な睡眠と活動が行える生活環境について研究する立命館大学名誉教授で情報理工学部特別任用教授の萩原啓さんに、〝よい睡眠〟について教わりました。

「疲れをとるには、何よりも睡眠です。『すぐに眠れる』『ぐっすり眠れる』『すっきり目覚める』。これが大切です。自律神経は自分でコントロールできませんが、睡眠環境は自分でつくることができます。自分にとって快適な睡眠環境をつくり、よい睡眠を大切にすると、生体リズムが整います」

日々の「疲れ」を「睡眠」で回復させ、規則正しい生活を送ることで「疲れ」を引きずりにくい体へ。

次の四つのポイントを、できることから実践してみてくださいね。

4Point
「寝る前に、体温を軽く上げる」
40℃を超えないぐらいのぬるめのお風呂にゆっくりつかって体をあたためたり、軽くストレッチを行い血行をよくしておくとグッド。

体温を軽く上げてから寝入ると、最初のノンレム睡眠の度合いが深くなり、そのあとのレム睡眠も良好に。つまり、ストレスを受けた脳と体がより改善される結果に。ストレッチは、緊張して硬くなりやすい肩や腰回りの筋肉を伸ばすイメージで。ただし、熱いお風呂や激しい運動は、交感神経が興奮してしまうのでNG。
「寝室は暖色系照明で薄暗く、好みで音楽や香りを」
入眠に要する時間は、8~20分といわれているそうです。真っ暗や無音では、感覚が遮断されているため、かえって脳が過敏になるのだとか。眠りに入りやすくするため、音楽や香りを利用するのもよいでしょう。自分がリラックスできると思う好みのもので。
「起きたら日の光を浴びる」
午前中に青白く2500ルクス以上の強い光を浴びることで、狂いがちな体内時計が正常な24時間サイクルに調整されます。ちなみに、薄曇りの日差しや窓際の太陽光でも1万ルクス以上。蛍光灯の光でも同じ効果が望めるとか。
「活動は午前中が最適」
運動や仕事など活発に動くなら午前中が最善。交感神経が優位に働き、副交感神経とのバトンタッチがよりスムーズに。また、精神的ストレスの度合いが高い場合は、積極的に動いて肉体的な疲れを意識して高めておくと、睡眠が深くなり、引いては回復しやすくなります。

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