空き家には、可能性がいっぱいです!

コミュニティーの力で、空き家問題にアタック!

この4月、「空き家の活用、適正管理等に関する条例」を施行した京都市。
平成22年から「地域連携型空き家流通促進事業」を市内の学区単位で展開しています。
その中から2つの取り組みを紹介しましょう。

まちづくりの一環に/京都市東山区・六原学区

菅谷さんは、30年以上にわたる地域活動のキャリアの持ち主。後ろの建て物は、六原まちづくり委員会によるマッチングで、空き家がゲストハウスに再生した例です

東山区の六原学区は、この事業に先立ち、平成18・19年に京都市景観・まちづくりセンターとともに学区内の空き家の実態を調査。その結果をもとに、住民同士で活用方法のアイデアを出し合いました。

「六波羅蜜寺のある場所柄を生かした観光施設、高齢者の居場所づくりなどの案が出されましたが、同時に、自分たちで管理できるだろうか、継続して取り組めるだろうかといった課題も出てきました」と六原自治連合会事務局長で、六原まちづくり委員会委員長の菅谷幸弘さん。

それより以前、平成15年に、同学区では「六原安心・安全マップ」を作成。住宅地図をベースに道路、交通事故やひったくりなどの発生場所、避難場所、子ども110番の家などの情報を書きこんだ詳細なものです。

「自治連設立時からの目標が『住んでいてよかった、これからも住みたいまちづくり』なんです。六原は、路地や戦前からの木造住宅が密集する地域。放置された空き家が地震で倒壊したり、放火されたりしたら、地域は多大な被害をこうむります。防災・防犯、そして空き家は、まちづくりにとって避けて通れないテーマ。平成22年から京都市のモデル地区になったことを機に、目標の実現に向けて、さまざまなテーマを考え合わせながら取り組みを進めています」

現在は、空き家活用の意向を持つ所有者と居住希望者のマッチングを行う一方で、学区民向けに将来空き家をつくらないための研修を実施。

「高齢者が多く人口減少の一途では、六原はますますさびれてしまいます。子どものいる世帯など新しい人たちが六原に入ってきて、コミュニティーの力を生かしていければと思っています」

〝大量発生〟を食い止めるために活動中/京都市西京区・洛西ニュータウン

「高齢化し空き家になりそうなのは、洛西ニュータウンの入居第1世代。何世代もの相続がからんだ物件ではないので、今後の規範となる取り組みを目指しています」と香水さん。西境谷の住宅街で

京都市南西部に位置する洛西ニュータウンは、昭和51年に分譲住宅や公団賃貸住宅への入居が開始されました。

「当時、働き盛りだった世代はすでに定年を迎え、少子高齢化が一気に進んでいます」と、洛西ニュータウン創生推進委員会の住まいと景観チームでリーダーを務める香水(かすい)義三さん。同地域は、福西、新林、境谷、竹の里の4学区で構成されています。

3年前に福西学区、今年1月に他3学区の空き家の実態を調査した結果、戸建て・テラスハウス(連棟建て住宅)3329戸中135戸が空き家と判明。空き家率は4%でした。京都市全体の空き家率14.1%比べると、空き家が少ない地域に思えますが?

「約40年前に40、50代で入居。現在は、子どもが独立し老夫婦だけ、というケースが非常に多いんです。この先10年間で、一人暮らしの老人が増えるでしょうし、さらに言えばその所有者が亡くなったり施設に入ったりしたあと、空き家になる可能性が高い。将来のニュータウンに危機感を抱いています」とのこと。

また、「ニュータウンという土地柄、定年後の近所づきあいがとぼしく、コミュニティーの関係が希薄という点も心配なんです」とも話します。

「誰が住んでいたか、その家族がどこにいったか分かる人がいないため、空き家の管理や活用について話し合うこともできません。今後は、住民の空き家に対する危機意識を高めていきたいですね」

人が集まればますます魅力的に

空き家を活動拠点にして、アートの力で地域復興

「今、陶器人形を作ろうと企画中。もちろん、地域の人も一緒に制作します」と関本さん(中央)。右は、プロジェクトリーダーの芝千愛(ちあき)さん、左は同大学プロジェクトセンター職員の久保奨さん

前述の六原学区で、空き家を活動拠点にしたアート系の取り組みが行われています。それが、平成17年に始まった京都造形芸術大学のプロジェクト「まか通」(まか=まか不思議の略)。姿を消していく歴史ある建物や文化、伝説、風景などをアートの力で復興し、地域の活性化につなげようというものです。

「当初は大学のある左京区から通っていましたが、5年前、六原自治連合会から旧六原小学校横にある庭付きの空き家を紹介してもらい、活動拠点『六原ハウス』が誕生しました。現在は一部をシェアハウスにしてプロジェクトに参加している学生らが入居。住民の目線で取り組めるようになり、住民との信頼関係が深まりました」と同大学教授でまか通を指導する関本徹生さん。

「六原学区に限らず、地域の人が、地域の空き家をもっと活用するようになってほしいと思っています」(関本さん)

空き家でシェアハウス。英語の力を高める場所に

日曜日の英語サロンでは、まず英語で自己紹介。お菓子を食べたり、コーヒーやビールを飲んだりしながら、にぎやかな雰囲気の中で開催されていました

京都市伏見区醍醐にある、棟続きの住宅に「醍醐英語シェアハウス」の張り紙が。ここには、英会話に興味のある人が集まり、1軒の住宅に2、3人が共同生活をしています。

「日本を訪れている外国人観光客は、日本人との交流を楽しみにしている人が多いのですが、日本人はというと『英語は苦手』と拒絶反応。これでは、もったいない」

そう話すのはNPO法人京都創生ネットワークの理事を務める三輪芳夫さん。「共同生活を送って、日常的に英語に触れれば、英語の力は身に付きやすい。空き家を活用して、英会話を楽しむ場所を広めたい」とのこと。

このシェアハウスは、住宅のオーナーである田中肇さんが自ら改修した空き家。「地域に開かれた場所として活用すること」を条件に、三輪さんが提案する〝英会話を楽しむ場所〟として提供したのだとか。

そのため、毎週日曜日には、シェアハウスの一室が「英語サロン」に変身! 取材時は、京都在住のオランダ人、海外旅行が趣味という近所に住む女性、仕事で外国人にかかわる機会が多い人など、口コミで誘い合った仲間が集まっていましたよ。

このページのトップへ