心にも体にもきくビタミン!歌うってステキ

心にも体にもきくビタミン!
歌うってステキ

3大パワーは発散、美意識、コミュニケーション

歌手・ヒーリング音楽アドバイザー 中森万美子さん

歌手・ヒーリング音楽アドバイザー
中森万美子さん

「歌は、人の心と体を元気にする可能性を持っています」と話すのは、プロ歌手であり、ヒーリング音楽アドバイザーの中森万美子さんです。中森さんは、歌を歌うことには3つの働きがあると考えているそう。

その一つ目が、“発散”。
「言葉ではうまく言えず気持ちがモヤモヤするとき、『あ、この歌、今の私にぴったりくる』って思うことがありますよね。それは、歌の中に自分の気持ちをあらわす何かが含まれているから。その歌を歌うことで、自分の思いを理解し、歌にのせて発散できるんです」

二つ目は“美的感覚の満足”です。
「美的感覚というと、一般的には美しさを感じ取る感覚のことですが、私はもっと大きく捉えていて、好ましいと感じ取れることだと思っているんですね。好きな歌を歌っているときって気持ちは安定しているもの。これは好ましい状況です。ですので、好きな歌を歌うことで、自分の美的感覚が満足させられると考えているんです」

そして最後は“コミュニケーション”です。
「一人で歌うときも、もし伴奏者がいればその人と、合唱ならほかのメンバーと、気持ちを合わせることが必要になってきます。これがコミュニケーション。誰かと一緒に歌を歌うと、その人とすごく仲良くなれるんですよ、不思議と(笑)。人と人をつなぎ合わせる力が歌にはあるんでしょうね」

プロの歌手として、普段から歌漬けの生活を送る中森さん。身をもって感じる歌の力もあるのでは?
「本来、私、“気にしぃ”なんです(笑)。でも、歌を歌っていると、歌に集中するから悩み事も忘れてしまいます。で、歌い終わったら、悩んでいたことも『まぁ、しゃあないか』って。私には意識の切り替えのツールにもなっています」

健康にも一役買っている!

健康歌唱指導士・中川喜久さん

健康歌唱指導士・ 中川喜久さん

健康づくりのための歌い方を指導してくれる、その名も「健康歌唱指導士」(NPO法人日本大衆音楽協会認定)。京都でも10人以上の健康歌唱指導士が活動しています。京都府大衆音楽協会会長の健康歌唱指導士・中川喜久さんは現在81歳。「自分の健康は自分で守る。その手段の一つが歌」を実践しています。

「健康にとって、歌を歌うことはメリットが多いと思います。歌を歌うと呼吸がきちんとできるようになる、すると脳に酸素が行き届きます。また、胸郭が開きますので姿勢も良くなりますね。歌詞を覚えることは脳の訓練にもなりますので、特に高齢者には歌うことは利点が多いのではないでしょうか」と、中川さん。

「歌い始めると、次はこの歌、次は…、とアンテナを働かせるんです。好奇心を持ったり、目標を持てる、これも歌の効用ですね」

病院の治療でも歌が活用されています

京都医療センター・飯塚三枝子さん

京都医療センター・ 飯塚三枝子さん


みなさんは、“音楽療法”を知っていますか?
これは、病気を治したり、不安や痛みを和らげるために音楽を治療的に用いること。「京都医療センター」(京都市伏見区)でも、「脳神経外科」「緩和ケア」「神経内科」の3つの診療科に取り入れられています。
 同院の音楽療法士・飯塚三枝子さんによると、3つの診療科それぞれで、歌は異なる役割・使い方があるのだそう。
 「『脳神経外科』では、主に脳卒中の患者さんのリハビリテーション目的で行います。回復に意欲を持てる楽しさも重視の建設的なプログラムを組んでいます。
 一方、がんなどをわずらった方で、身体的痛みや精神的苦痛を取り除くことに重点をおいた『緩和ケア』では、心の平穏を満たすため、最期まで社会性を保つため、自分の感情を伝えるための“表現媒体”と捉えています。歌うことで今の気持ちが自然に音楽を通して表れてきます。例えば、選曲される曲、歌い方などで言葉では言えない思いが伝わってきます。私たちはそういった“感情の表出”を受け止め、患者さんの今を受け止めて寄り添う方法を考えます」

認知症患者の“自信”にもつながります

「神経内科」では、認知症の患者のために音楽療法を用います。
 「認知症になっても、歌の記憶って残っていることが多いんです。認知症が進むとできなくなることが増えますが、そんな中で歌詞が自然と出てきて歌えると、『私、こんなに歌える!』と自信をつけ明るくなった方もいます」
 歌を歌うことで、「患者さん本人もご家族もハッピーになれる」と飯塚さん。
 「もしご家族に認知症の方がいれば、ぜひ歌をすすめてみてください。そして、口ずさんでくれたら『すごい!』『その歌教えて』と興味を持ってください」。これは、歌うことでその歌の背景までも思い出すことがあるからなのだとか。
 「例えば、大阪万博のテーマソングを歌ったら、『万博行った?』『どんなんやった?』と聞くことで、その時の記憶がよみがえり、語り始めることもあります。こんな会話自体にも意味があって、話をすることで『自分が必要とされている』という安心感を持ってもらえるんですよ」
 身体面でも、自分の声を内外耳で聞くことが脳への刺激になったり、口を動かすことで口輪筋が鍛えられ、食事の際の誤嚥(ごえん)の予防にもなるのだそう。
 このように、目的はさまざまとはいえ、共通しているのは「歌は自己表現である」ということ、と飯塚さん。
 「歌を歌うことで、その方の状態が察知できたり、歌を通してその方の文化、人生に触れることができるんです」

子どもの発達にも影響アリ!?

京都女子大学・深見友紀子さん

京都女子大学・深見友紀子さん

 幼稚園や保育園では“歌”がつきものです。ということは、子どもの成長にも歌を歌うことはかかわりがあるのかも…。そんな疑問に京都女子大学 児童学科の深見友紀子さんが答えてくれました。

 「子どもにとって、歌を歌うことは日常の生活であり、遊びの一つ。歌うことで息を吸ったり吐いたりすることは、発声器官の発達を促します。
 また、言葉や音声の模倣でもある歌は、言語力の育成にも役立つと考えられます」
 大人が一緒に歌う時間も大切と深見さん。
 「大人の口まねをすることで、次第に口や舌の動きがスムーズになり、正しい発音の仕方を習得できます。『アイアイ』などのように、掛け合いをする歌もいいですね。『どっちが先に歌おうか?』などと、コミュニケーションを取れるので、子どもも楽しんで歌いますよ。親子で歌うときには、『この歌って、どういう気持ちで歌えばいいんだろうね』などと会話をするのもおすすめ。歌詞の意味を理解することで、情緒豊かな、表現力のある子どもに育つのではないでしょうか。それから、歌うときに身振りをつけるのもいいですね。歌詞の理解に役立つだけではなく、身体能力の発達にもつながります。

 いずれにしても、私たち大人は、歌が日常にあふれるように心がけたいもの。物を数えるときも『いーち、にーいっ、さーん、しーいっ』と抑揚をつけたり、何かできたときは、『でーきた、できた』と大げさに表現するだけでも構いません。幼児期のこうした環境が心身の成長や発達にかかわってくるんですよ」

 では、子どもが歌うときの注意点はありますか。
 「よく『元気よく歌いましょう』といいますが、それは決して大声でどなることではありません。歌を通じて自分を表現し、周りの人とコミュニケーションを取るには、自分の声をきれいに響かせて、周りと声を合わせることが大切。そのことに気付かせてあげてくださいね」

今回の取材で、年齢によらず、歌は私たちの生活に密接にかかわり、大きなパワーを与えてくれていたことが分かりました。手軽にカラオケもいいし、この機会に合唱のサークルに入るのもいいかも。読者のみなさんも、生活にたくさんの歌を取り入れてくださいね。

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